愛すならいっそ殺してくれ
幽閉されて、拘束されて、その上立ち上がるための足なんて使い物にならなくされて、もうどこにも行けやしない。今も記憶に鮮明に残っているのは、両親が殺された時。
あの男は狂っている。
私が好きにならないだなんて分かっているはずなのに、絶対に逃げられないと分かっているはずなのにどうしてあの人は
「やあ、名前」
「………………」
唇にやわらかいものが押し当てられる。
少し冷たい彼の唇。
されるがままに舌を受け入れ、向こうが飽きるまで付き合う。
「………何か喋ってヨ?」
「………………」
彼に対する私への愛はもう歪んだ執着になりつつある。
クリアできないゲームをクリアしようと躍起になる子供みたいに、私を振り向かせようとする。
そういう風になればなるほど自分が私から遠ざかっていくって、気付かないの?
「何で俺を見てくれないノ?」
私の方が聞きたいわ。何でそんな純粋な瞳で私を見れるのよ。
あんたみたいなのに愛されたって困るだけ。
「………馬鹿な男ね………」
そう呟くと苦痛に歪む、彼の顔。
私は口角を持ち上げた。久しぶりに愉快な気分だ。そうやって、愛にもがき苦しんでしまえ。
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