君だけが、捕まえられない
「アーッハッハッハ!まだまだだな真選組ィ!そんな甘っちょろい張り込みじゃいつまでもあたしを捕まえられやしないぞォ!!さらば!」
「待てェェェ!!」

かくして俺、山崎退の一ヶ月間にわたる張り込みは、犯人の鮮やかな手口によって水の泡となった。

「ボサッとしとんな公僕ゥゥ!あ゙あ゙あ゙あ゙ワシの五千両ォォォ!信者共だまくらかして巻き上げた五千両がァァァ!!………あ」
「………ちょっと署まで来てもらえる?」

今江戸を騒がせている義賊、名前。
悪どい商売人や金持ちばかりを狙い、いかに厳重な警備をもってしても奴に潜れなかった場所は無い。
真選組が血眼になって追っているのだが、いつもあと一歩というところで取り逃してしまう。

「へェー、旦那も大変だねェ」
「そうなんだよ…おかげでマヨ上司に今日も怒られるし…」
「まま、飲みな。ここにはおっかねェ上司もいねェことだしよ」

俺が愚痴をこぼしていると女の声がした。

「おやっさァーん、こんばんはー」
「おう、名前ちゃんじゃねーか」
「えへへー、ご無沙汰してまーす!あ、隣いいですか?」
「あ、どうぞ………ッ!?」

俺は驚愕のあまり眼球が飛び出そうなほど目を瞠った。だってすぐ隣に座っているのは手配中の盗人名前だったのだ。
またとないチャンスに俺は酔いつぶれているふりをしながら、いつでも逮捕できるよう懐の中の手錠に手をかける。

「そういや名前ちゃん、しつこい団体に付きまとわれてるらしーなァ!」
「そうなんですよォ!でもね」

耳を傾けわざとらしい寝息を立てる。

「いつも絶対会う地味な人がいるんです。その人の地味なオーラがもうなんとも言えなくて…そう、可愛いの」
「惚れちまったのかィ!?」
「やだもー言わないでください!…だからわざと逃げてまた追っかけさせるんです。そしたらまた会えるから」

それから数十分たって、名前は話を終え帰っていった。

「旦那、そろそろ寝たふりやめたら?」
「………うん」

逮捕はいつでもできました。
でもできなかった。

title:31D

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