貴女の明日を私にください
あの世には転生というシステムが存在する。
天国で一定期間過ごした私は、明後日転生することを告げられた。
「名前さん、もう明後日に迫りましたね」
「鬼灯さん」
鬼灯さんはこっちで色々とお世話になった鬼の方。
縁あって白澤さんが経営する薬屋で働いたり。
「ここも楽しかったです。やっぱり生きてる間でも学べないことって多いですし。あーでも、白澤様私がいなくても大丈夫でしょうか」
「腹いせに私に人材要請の書類送ってくるでしょうね」
はは、と笑って鬼灯さんを見つめた。
…次にここに来る時は私は私でも別の私だ。
もしかすると悪いことをしでかして地獄逝きかもしれない。今の私の記憶は忘れ去って、全く別の私になってここに来る。
結局最後まで言い出せなかった。
「鬼灯さん」
「はい」
「私ずっと鬼灯さんに言い出せなかったことがあるんですけど」
「奇遇ですね。実は私もです」
「あら。私が先に言っても?」
「どうぞ。こう見えて慎重な性格なので」
「ふふ、そうね」
一呼吸置いて、鬼灯さんの大きくて細い手が私の手に絡まった。
「貴方が好きです」
「はい私も貴女が好きです」
「………だから、最後にお願い。貴方の明日を私にください」
わずかに震えている私の手を、鬼灯さんは強く握り返してくれた。
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