カウンターキス
鬼灯様に書類を届けるよう頼まれた。届けに行ったら鬼灯様は今日の裁判の記録していた。
「鬼灯様。書類のお届けも……」
いきなり肩を掴まれて、引き寄せられた。柔らかいものが唇に当たってすぐに離される。その柔らかいものが鬼灯様の唇だと気付くまで数秒かかった。
「………」
「ふう、これで今日もまだ頑張れる。」
えっ、この人今私に何したか分かってんのか。
「あ、書類ですか?どうもありがとうございます」
「……イイエドウイタシマシテ」
何この何事も無かった感。
…ああ、相手がキスできたら誰でもいいとか、そういう?そういう方だったんですか?
もしそういうのでいらしたんなら、幻滅です。好きだったのに。鬼灯様。
鬼灯様のせいでふつふつと湧き上がってきた怒りは、鬼灯様によって治められた。
「いきなりすみませんでした」
ぺこりと頭を下げ、ちょっと頬を赤らめて。
普段からは想像もつかない顔。
「あの、我慢できなかったので。」
そう言われ、調印された書類を渡され、中ば無理矢理法廷から出された。出る間際に、鬼灯様が「書類の確認お願いします。」と小さく言った。
「…?」
するすると巻物を広げると。
「!」
“好きです”
と付箋が貼られていた。書類に直接書かないで、書類を駄目にしないところが抜け目ない鬼灯様らしい。
絶対今日定時にあがって鬼灯様のところに行こう。
私も好きです。って絶対言おう。
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