企画
四千里離れてる
「ジュダル、」

危うげな空気を孕む禁城の宮廷は静寂に包まれていて、ジュダルが自分の名を呼ぶ透き通る静かな声に振り返ればアルサーメンの魔女、練玉艷が微笑んでいた。

「なんだよ。」

これからなまえの許へ向かうはずだったジュダルは若干ギクリとしながら彼女に向き直ると、優しい笑みを浮かべたまま彼女は首を傾げた。

「貴方、何処に向かっているのかしら?」

「何でも無ぇよ。単なる暇潰し。」

「暇潰し?ええ、そうね。あの子と過ごすのはとても楽しそうだものね。時間が過ぎるのも忘れるわ。最近は随分ご執心だものね。」

この女知っていたのか。とジュダルが顔を強張らせると玉艷は彼の両手をとり、胸の前でそっと両手で包んだ。

「そんな顔しなくても良いのよ。別に怒ってないから、そうだわ、貴方にあの子、差し上げましょう。」

「は?要らねぇよ。」

「あら、そう?あの子ももうすぐ用済みなのよね。」

一体この女は何を企んでいるのだろうか。美しい微笑みで塗り潰された表情からは何も読み取れず困惑するばかりで、ジュダルはパッと彼女の手を払うと静かに自分を待つ占い師の許へと向かった。

牢の門番は虚空を見つめている。こんな者が本当に見張りに役立っているのかジュダルには分からないが牢の中の囚人は今のところ此所から出ようとも思っていないし、出られたところで城内で捕まってしまうことは目に見えているのでこの見張りも意味は無いのだろう。

相変わらず殺風景な部屋の片隅でなまえは座り込んでいた。彼女のいつもの場所は寝台の上だというのに、ジュダルがいくら声をかけても返事すらしないのだ。

痺れを切らした彼がなまえの腕を掴み上げると彼女はゆっくりと両の瞼を開いた。






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