企画
五千年の衰え
「不調だな。」

と、紅炎様に言われてしまった。
最近になって自分はどうにもおかしいらしくてその影響は占星術にも顕著に現れている。

「ごめんなさい。」

とても申し訳ない気持ちになって謝るとそんなこともある。と言うように紅炎様は頭を撫でて下さった。

紅炎様が射なくなった後、部屋の隅に座って考える。
私は一体どうしてしまったのだろう?

占星術は私の生きる術だ。これが無ければ自分はただの小娘だ。用済みになって処分されてしまう。ああ、どうしよう、どうしよう。
どうしてこうなってしまったのだろう?

もしもこのまま星を視れなくなってしまったらどうなるのだろう。
殺されてしまうだろうか?
此処から放り出されて外の世界で一人生きていくのだろうか?

「どうしよう。」

指先が震える感覚を押し戻し抑えては涙が溢れそうになるのを我慢した。誰も見てやしないのに。

「なまえ。」

ふと気が付くと目の前にジュダルが居た。昼間に彼が訪ねて来るなんて珍しい。今とても会いたかった人に会えたせいか、思わず彼に飛び付くと軽い衝撃と共に鈍い音がした。

「いきなりなにすんだよ!」

ジュダルは仰向けに倒れ込んだお陰で背中と頭を強かに打った様で瞳に涙が滲んでいた。

「ど、どうしよう。私、死んじゃうかもしれない。」

「はあ?」

「星を視れなくなってしまったの。」

事情を話すとジュダルは思いの外真剣に話を聞いてくれて、眉間には深い皺が出来ていた。

「まあ、一過性のもんなんじゃねぇの?俺もたまに魔法使い辛ぇ時とかあるしよ。」

「そんなことあるの?」

「ああ、だからあんま心配することねぇんじゃね?」

そう言ってジュダルは私の手を握ってくれた。少しだけ汗ばんでいた彼の手は私の手の甲を痛いくらいに力を込めて包んだ。

「無理すんなよ。」

「有り難う。暫く側に居てくれる?」

彼の肩に寄り掛かると返事の代わりに口付けが返ってきた。




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