不安と過去


李青秀という男は元来面倒見の良い性格であるからか味方からはよく好かれる男であった。
先日、自らの主の弟君に仕える後輩なまえに出会った。

久し振りに出会った後輩は立派に役目を果たしているようであったが、どうにも自分の実力に不満があるらしく相談にやって来たのだが全く返答に困る悩み事であった為かなり頭を悩ませていた。

「私はやはり、側近として頼りないでしょうか?」

なまえの家は代々科選によって宮中に出仕する家でまさに実力主義である。その為世襲による官位の引き継ぎをしないというしきたりのもと、各々が自らの特技を生かし国に貢献している。

彼女は先日の謁見の件で仲間外れにされたことを少し気にしているらしい。なんでも神官にお前は頼りないと言われたらしい。
全く余計なことを言ってくれたものだ、と青秀は神官ジュダルを忌々しく思った。

実のところ、あの謁見事態罠の仕組まれたもので、西へ軍を進出させるのにあの隣国は邪魔だったから適当に理由をこじつけ戦を起こすことによって滅亡させたというそれだけのことだった。

「んなこたぁ、無ぇだろ。てか紅明様はお前を信用して仕事を任してくれたんだからよ。無駄口叩いてねぇでやればいいだろ。」

「ええ、分かってます。でも本当にお役に立ててるのか。」

正直なところ紅明が何故なまえをあの時謁見室から追い出したのかという理由は青秀にも理解できた。
しかし、汚い所を見られたくないとか、嫌われたくかいって言うのは単なる利己欲に過ぎねぇからなと、思っている。

鈍すぎるこの側近は自分がどれだけ主の庇護下に置かれているのか分かっているようで分かっていないのだから質が悪い。

なまえの自室には中庭に出ることができる硝子の大きな窓がある。
この部屋に来た頃彼女は窓から中庭に出ると地面に板を敷き、西洋風の椅子とテーブルを置いて勝手に自室を広げてしまった。

今ではそこでお茶をするのが青秀と彼女の小休止となっていた。

最近になってから仕事も片付き、紅明やなまえも息抜きをできる時間が増えたので今日は久し振りに茶でもしばこうということになったのだ。

そもそも何故一官吏だった彼女と練家の家臣である彼が知り合ったのかというと、先の戦で死んでしまった彼女の兄が青秀の部下であり、友人であったことと彼女が紅明の側近となるに至った経緯に深く関わるきっかけがあった。

「なまえ私にもお茶を下さい。」

「紅明様、鳩に餌やりはもう良いんですか?」

「ええ、」

中庭で鳩に餌をやっていた紅明がなまえの元に戻ってくると彼女はこの話はまた後でって目線を送ってきた。

「そういや、紅明様はどうしてなまえを側近に選んだんですか?」

「どうしたのですか?いきなり。」

「わ、私もそれ聞きたいです。」

「私はなまえが何故あの候補の中に居たのかその経緯が知りたいですね。」

紅明は苦々しい顔をしながら話をそらすとなまえも気まずそうにしながら事の経緯を語りだした。






prev next
back


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -