This is 疎外感

喧しい鳥の囀りが耳に入り今日も忌々しい朝が来たことを確認すると、重い瞼を無理やり開いて二、三秒伸びをして眠気を身体から追い払う。

窓を開け放つとまだ日も昇っていない紫色の空に薄い色の雲が浮かんでいた。
部屋に寒風を入れて、二度寝の予防をしてから身支度を整える。
肩まで伸ばした髪は後ろで一つに結び、服装は身軽かつ見苦しくないものを身に付ける。
紅明様を起こすのには少し時間が早いため煙管を蒸かすと紫煙がプカプカと空中を漂い窓から流れるように空へと昇っていく。

そんな光景を暫くの間ぼんやりと眺めていると日が昇り始め丁度良い時間になるので寝起きの悪い紅明様を起こしに行く。

彼は低血圧であるが故にとても寝起きが悪く、定時に起こせたことがない。
特に最近は軍議が詰まっていて夜遅くまで長引く為、朝早く叩き起こされる可哀想な彼の機嫌はすこぶる悪い。

「紅明様、朝ですよ。起きてください。」

「……もう少しだけ寝かせてください。」

部屋に入ると彼はやはりまだ眠りについていて肩を軽く叩きながら声をかけると紅明様は迷惑そうに眉をしかめて布団のなかに潜ってしまう。

「今日は朝から軍議が入っています。その後は隣国の王が謁見に参りますので、そのお相手を。軍議は貴方が居ないと始まりませんし、謁見には紅炎様もいらっしゃいますが紅徳様がいらっしゃらないので出席は免れませんよ。」

「やめてください、聞きたくありません。」

私も寝かせてあげたいのは山々なのだが仕方の無いことだ。と心を鬼にして思い切り布団を取り上げると紅明様は寝台の上で縮こまり怨めしそうに私を見た。

「うぅ、寒い。」

「此方のお召し物に着替えて下さい。」

紅明様の着替えが終わると無造作に下ろされた長い髪を結うのは私の毎日の仕事の一つである。
傷みまくりの彼の髪の毛を抜けないように少しずつ櫛で解かし一本に縛る。

それからそれぞれ別々に朝食を摂るのだが、最近、紅明様が私専用の椅子をくれた日から何となく二人で向かい合い朝食を摂るようになった。



朝の軍議も相変わらず話は進展せずもやもやとした気持ちを抱えながら謁見に向かった。
幾つもある客室の中で最も豪華な装飾のその部屋にはもう既に紅炎様や家臣の李青秀様や周黒惇様が居た。

「申し訳ありません、兄上。遅くなりました。」

「構わん。」

「青秀様、黒惇様お久しぶりです。」

「おう、相変わらずチビだななまえ。」

紅炎様の家臣である青秀様と黒惇様とはちょっとした知り合いで、私が紅明様の側近になりたての時も何かと世話を焼いてくれた恩人のような存在だ。
青秀様は、にかっと笑うと私の頭をぐしゃぐしゃと撫でてくれる。

「ちょ、止めてください。痛いです。」

「青秀、紅明様と紅炎様の前だぞ。」

「あ、申し訳ありません!」

青秀様が慌てたように二人に謝ったけど紅炎様と紅明様はさして気にした様子もないようだった。

「いえ、構いませんよ。それよりなまえ。」

「はい。」

「貴女は一度席を外していなさい。まだ、やらなければいけない仕事も残っているでしょう。此処は青秀も黒惇も居るから護衛は必要有りません。」

「え、でも。」

「たかが謁見ごときで執務に支障を出すわけにはいきません。戻って文官たちの指揮をとりなさい。」

「はい、わかりました。」

側近ならば主の傍に常に居なければならないのに、たまにこうしていきなり紅明様に突き放される時がある。
そんな時は納得いかないのだけれど、主の言葉に従うのが部下だからと思い素直に退散するようにしている。

一礼をして謁見室を出る。青秀様が少し心配そうに大丈夫か?と私に目配せしたので大丈夫ですと笑うと余計に心配そうに眉を寄せられた。

それから、仕方無く文官たちの元に向かい仕事を再開し昼には全ての仕事を終えた。


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