第二皇子の偏頭痛及び独白



近い内にバルバッド近くの国境に遠征に行かなければならなくなった。

遠出するのは正直気が重い。特に彼処の地帯は乾燥が激しいし、なにより熱い。
しかし、兄上や紅覇も行くというのに自分だけ行かぬわけにも行かないし、頭が痛くなる。

私の頭痛の種はそれだけではない。側近であるなまえのことも考えると更に頭痛は増す。

間抜けなように見えて聡明な彼女は自分が他人に必要とされなくなるのを何よりも恐れているし、自分が眷属器を持たないのを少なからず気にしている。

自分の身勝手な願いのせいで彼女を傷付けているのは重々承知の上だ。

今回の遠征もきっと私が彼女を連れて行く気が無いと知れば深く傷つくだろう。けれど、私と彼女が戦場に出れば彼女に眷族を与えてしまうのは分かりきっていることだ。

眷属器を持てばなまえは新しい力を手に入れたことを喜ぶだろう。自分も兄上の眷族たちのようになろうとするのだろう。

それは決して喜ばしいことではない。少なくとも自分にとっては。

これは自分勝手な願いであるし、私の思う彼女の幸せが彼女自身にとっての幸せとは限らない。

側近として従者を取るときその者がどんな末路を辿るのか痛いほど解っていた筈だった。

眷族と同化をすれば二度と人の姿には戻れない。もし、なまえがこの先更なる力を求め、そう成ってしまうのなら彼女に選択の余地など無く武の道を進むしかない。

人ならざる力を持つ異形の者。そんなものにさせて良いのだろうか?

たとえ本人がそれを望んだとしても、私は彼女を人である姿に、今ここにある通りの心の形に縛り付けておきたい。

私にとっての彼女はもう既に盤上の駒ではなくなってしまったのだから、









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