春風と後日談

「実はあの時私、なまえの隣の男性となまえの番号を勘違いしていたんですよ。でも今更間違いですとか言えないんで仕方なく側近にしました。」

「は、はぁ。そんな事情があったんですね。」

「ほんと失礼しちゃいますよね。お陰様で未だにその時の武官に恨まれてるんですよ。」

それから、仕事に就くも紅明様には貴女には特に何も期待していませんので適当にやってて良いですよ。とまで言われたのだが、外を歩いては石に躓き転びそうになったり、18にもなるのに一人で着物が着れなかったり髪を結べなかったりで結局見てられなくなり世話を焼き続けた結果が今に至るのだ。

私が世話を焼きすぎたせいか、この前なんて紅覇様になまえが明兄を甘やかしすぎたから自立できないんだと言われてしまった。

紅明様はやや気まずそうに目線を下げると、今では貴女が側近で良かったと思っていますよと言ってくれた。

ほらな、と青秀様がドヤ顔で私に視線を送ってきたので少しムカついたけれど、とても嬉しいのと恥ずかしいので顔がとても熱かった。

「ま、まあ、あんな脳味噌筋肉のおっさんがたには側近兼専属文官なんて勤まらなかっただろうし!」

「貴女も人のこと言えないでしょうなまえ。」

「誰が脳筋ですか!?」

「落ち着けなまえ。」

折角良い雰囲気だったのにやっぱりこの皇子は意地が悪いのだ。後頭部に毛虫くっつけてるくせに!

「ほら、もうこんな時間ですよ。早く仕事に戻らなければ。」

「あ、今話をはぐらかしましたね。」

「良いから行きますよ。青秀、なまえの面倒を見てくれて有難うございます。」

「いえ、そんな。」

「私を子供扱いしないで下さい。」

青秀様に軽く会釈をして、先を歩く紅明様を追いかけると風が春の匂いを運び込んできてくれた。
春の風を浴びながら紅明様は次の仕事を思い憂鬱な気持ちになったのか。

ああ、面倒くさい。と呟いた。


prev next
back


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -