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≫桐青戦終幕1







六回の表。
田島は初球を三遊間ヒット。二盗するが、花井がセカンド正面で沖と水谷が三振し、あっという間に交代となった。
それから六回の裏。初めはレフトの松永で次が島崎。しかし1人目は切ったものの、 島崎にはカーブを待たれて打たれた上に、4番はバスターして一死二・三塁となってしまった。そして次の打者は、河合。
阿部は一番安全であろう"まっすぐ"を要求した。だが上手くボールの勢いを殺され、なんと、もう一点追加されてしまった。これで同点だ。
あと三回、投手にはなんとか頑張ってもらいたいところである。



七回の裏、攻撃はピッチャーの高瀬からのスタートだ。高瀬は三振させたがそのあとの打者二人にラッキーが続いて二死一・三塁。どうにも嫌な感じで、監督と横にいた名前はお互いに顔を見合わせた。
だがこれでツーアウト。逆転さえされなければまだまだ勝ち目はある。


「雨…また強くなったね…」
「うん、このまま試合中止とかにならなきゃいいけど…」
「そうだね…それに、グラウンドの状態も心配。特に投手の足場……大丈夫かな」


そんなことを篠岡と話していた時、試合が大きく傾いた。なんと、西浦が逆転されてしまったのだ。原因は三橋のワイルドピッチ。今まさに、名前が心配した通りのことが起こってしまった。


「三橋君……」

酷い表情の三橋。誰も怒りはしない、誰も責めたりしない…のに。三橋はずっとブルブル震えている。
名前はただひたすらに心配の眼差しを送ることしかできなかった。



それから三橋は一度敬遠し、足場と手の感覚の確認をした。それでどうにか大丈夫になったようで、三橋の表情は少しよくなったみたいで名前はホッと一息ついた。


八回表は巣山からスタート。残念ながら次の田島は三振してしまったが、すぐに彼はコーチに入り、簡単に巣山を三盗させた。そして水谷が見事にバットにあて、同点まで追い上げた。

あと二回。最低でもあと一点は入れなければ、西浦の勝利は見えない。
八回の裏、四番の青木からスタートだ。

「名前ちゃんだったら、この打席、どんな配球にする?」

監督がグラウンドから目を離さずに尋ねた。

「あの四番はまだストレートとらえられてないですからね、取り敢えず一球目はストレートですね。今まで散々変化球できましたからストレートが一番効果的だと思います」
「なるほどね。…あれま、阿部君も同じ考えみたいね。ホントあなたたち、高度な野球してくれちゃって…」

敵わないわ。と、微笑を浮かべる監督。名前はコクンと小さく首を傾げた。彼女には、高度な野球はやってるという自覚がないため、少し不思議だったのだ。


そうこうしている間に、5番の河合が出塁し、6番の時にエンドランでバスター。これは想定外のことで、選手もベンチ側も驚きを隠せない。
そして次の7番のバスターで、ついに河合がサードを蹴った。水谷から4つでホームへ戻す……が、タッチの差で返球が間に合わなかった上に、阿部のブロックが甘かったせいもあり、なんとこの場面でまた逆転されてしまった。




このあとの打者はなんとか抑え、一点で収まったことにみんな息を漏らした。
これならまだ逆転できる。次は9回表、阿部からの攻撃だ。



一球目はストレート。だが9回にしては驚くほとスピードが速く、阿部は一球目を空振りした。その上二球目は見送り。

「あ、もう振ってよ!振らなきゃ当たらないってば!」

「へっ…」

いきなり声をあらげた名前に栄口が不思議そうに顔を向けた。

「最低1点入れなきゃいけないんだから、先頭大事なのよ!って…それはみんなわかってると思うけどさ!あぁーもう!」

「そ、そうだね」

名字は本気なんだ。そりゃそうだよね、桐青相手に1点差なんだ、ここで踏ん張らなきゃ勿体ない!
そう思い、栄口も名前と一緒になって叫んだ。
そして4球目。少しタイミングが早かったが、なんとかボールは飛んでいき、先頭が出た。コーチャーには田島がいるので当然走る。その時に泉は上手くプッシュし、ボールはピッチャーを抜け、ノーアウト一・二塁。


「監督!」

その場面で名前は急いで監督の元へ走り寄った。

「もう高瀬さんはフォークないですよ、ここは速球に絞るのが得策かと思います…!」
「それは確実?」
「はい。このマウンドはもうぐちゃぐちゃです。ボールもかなり湿ってきてかなり投げにくい状態だと思います。普通の投手だったらもうその時点で投げるのを渋るはずです。実際、4回の水谷君以降一球も投げてません」

「なるほど…よし、巣山君!このことを栄口君に」
「わかりました」

コクンと頷きタイムをとる巣山。最後に栄口の手を握り、喝を入れてからベンチへと戻ってきた。その甲斐あってか栄口は見事にバント成功。

「次は巣山君…。転がったら迷わずホームに突っ込んでよね、隆也」

しかしそんな名前の思いも虚しく、ボールを飛ばすことはできなかった。次は田島。ツーアウトなのだ、なにがなんでも打って欲しい。
だが4番の田島にはシンカー攻撃。なかなかとらえられない。そして最後のシンカーがミットへ届く瞬間……田島が打った。
振ったバットの遠心力で指3本のとこまでバットをずらして打ったのだ。


「勝ち越し……!!!!」

「やったね名前ちゃん!!」
「うん、やっぱり田島君はすごいよ!!!!」


2人で手を取り合い、喜び合った。さぁ、あと次の回を守りきれば西浦の勝利は目前だ。



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