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 ▼ありのままに

「…隆也、鞄から何か覗いてる」
「は?」

ある日、私が隆也の部屋に遊びに来た時に、私は何よりも先に鞄…というかエナメルから覗いている物に目が行った。それは俗に言う「エロ本」と呼ばれる物の類。まぁ、男なんだから絶対持っているだろうとは思っていたのだが、彼の場合は今までつき合ってきて一度もそういう物を見たことがなかったので、逆に驚きだ。しかし、当の本人は全く慌てる様子を見せることもなく、ただ「ああ」と声を洩らしただけである。

「ちょ、反応薄くない?」
「そうか?別にそれ田島から回ってきたもんだし、隠し立てするようなことでもねーだろ」
「そうだけどさぁ…ここはもうちょっと焦りを見せるとかさぁ…」
「焦ってどうなる。どんなメリットがあるってんだよ」
「私が楽しい!」
「それお前のメリットだろうが。つーかお前の反応もどうよ?人のこと言えたモンじゃねーだろ」
「どんなの期待してたの」
「ちょっと赤面して怒るとか」
「あははは、ないな。私そんなに可愛い反応できないよ」
「ああ、知ってる」

もともとそんなに女らしくない私。隆也はそれも含めて私を好きだと言ってくれるけど、本当は隆也ももっと女らしい子がいいんじゃないのか、とたまに思う時がある。

「…可愛い反応がやっぱり理想?」
「んあ?」

少し控え目に尋ねたら、隆也は一瞬笑って私の頭をポンポンと撫でた。

「くく、何だ。少しは気にしてたのか」
「ち、違うけど!でも、そうなのかなって…ちょっと思っただけ」
「どんな反応しようが、俺は全然気にしねぇ。お前がお前のままで居てくれたらな」
「…何か格好いいぞ隆也」
「だろ?」
「っ、ああもう!悔しいからエロ本見る!」
「…何でそうなる」

私はエナメルからガバッと本を取り出し、適当にページを開いた。

「おおう…」

中身は思ったより露出度が高い女の人ばかりで、少し驚いた。しかし田島君から回ってきたのならこれくらいが当たり前なのかもしれない。寧ろこれくらいの物しかないかもしれない。

「隆也、どの子好み?」
「俺まだそれ見てねーから好みって言われてもな…」
「じゃあ一緒に見よーよ」
「…お前ホントに平気なんだな」
「今時見れない女子高生の方が少ないと思うよ。好んで見ようとは思わないけど見れないことはない」
「へぇ」

そう言うと、隆也はベッドから降りて私の横に腰を下ろした。それに合わせて私は手に持っていた本をテーブルの上に広げる。

「あ、この子いーなー」
「どれ」
「この子。胸の形がいいね」
「おっさんかお前は」
「隆也はやっぱり巨乳派?」
「いや、俺は特に大きさを求めてねぇ」
「うそん、じゃあ貧乳好きなの」
「誰がそんなこと言った。せっかくついてんだから、あるに越したことねーだろ。俺的には丁度いい感じがいい。大きさも柔らかさも」
「隆也ってばマニアックー」
「うるせ」

そう言うと隆也は、くしゃっと私の髪を乱しながら頭を撫でた。




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