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 ▼初恋

(漫画19巻の裏表紙の1コマを参考)




「初恋?」
「そう、初恋!」

夏大が終わってからの合宿中のこと。とある空き時間に私達は初恋年齢の話になった。話を切り出した張本人、水谷君が、笑顔で私に尋ねてくる。

「私、初めて好きになった人が…隆也…」
「えっ、ってことは中三?」
「そう…なのかな」
「へぇ、意外」

水谷君に加え、栄口君まで耳を傾けてきた。

「俺、小学生位が初恋なのかなーって思ってた」
「…私、あんまりそういうの興味なかったんだよね…多分」
「多分?」
「うん。なんか…自分でもよくわからなくて。でも隆也に会うまで恋とか、全然なかった」
「そうなんだぁ」
「そういう栄口君はどうなの?」
「俺?俺は中一!」
「水谷君は?」
「小六!」

自分と違い、初恋というものをキチンとこなしている二人。こうなると他の西浦ナインの初恋年齢も気になるところ。私はいつの間にか私達の話に耳を傾けていた皆に質問した。

「泉君は?」
「俺も栄口と一緒で中一」
「えーお前ら遅くねー?俺三歳だぜ!」
「三歳!?」

急遽驚きの年齢を暴露したのは勿論田島君。田島君の事だから、結構早いうちから恋してたんだろうなぁとは思っていたけど、まさかの幼稚園世代で流石に驚いた。

「さ、三歳って…すごい…」
「そうかー?俺、クラス替えとかある度に好きな子いた気がする」
「さすが田島君…」

彼は、折に触れて起こる様々な感情を上手く受け止めていたのだろうな、と今更ながら尊敬する。

「西広君は?」
「…はは、俺も中一」
「わ、中一多いんだねー」
「沖君は?」
「俺…まだしたことない…」
「…そうなんだぁ。女子ちょっと怖い…とか?」
「うん、そんな感じ」
「お、俺…も、ま、だ…」

沖君の後ろにいた三橋君が、少しあわあわしながら呟いた。それを泉君が男子校だったのだから大丈夫だ、とフォローする。だがそれを聞いた巣山君が自分もまだ初恋未経験なのか、声を上げて抗議をした。

「大丈夫ってなんだよ!別におかしくねーだろ!」

彼からしたら別に何もおかしくないことなのだが、他の人は少し感覚が違うようで、水谷君と栄口君が代表して反論する。

「いやいや、恋したことないとかおかしいって!情緒が育ってなくない!?」
「それ何か問題あんのかよ?」
「なんで阿部が入ってくんだよ!お前は彼女いるじゃん!?」

巣山君と栄口君達の間になぜか隆也が割り込み、二人は声を荒げた。彼女がいる身で、巣山君と同じ思考なのがどうやら理解出来ないらしい。

「まぁ、いるけど。でも俺は別に恋ぐれぇしたこと無くても全然問題ねーと思うんだけど?」
「いやいや、自然の節理だよこれ?」
「んなことねーよ」
「そんなことあるよー!」

白熱する議論を見ながら、私は後ろにいた花井君の呟きをふと、耳にした。

「まーそー責めなくても…」
「……ふふ、」
「ん、なんだ?」

花井君らしさ全開の台詞に思わず笑ってしまった。するとそれに気付いた花井君が不思議そうに私を見下ろしてくる。

「ううん、何でもない」
「…ならいいけど」
「ところで花井君はどうなの?」
「俺か?俺は…確か小五だったかなー」
「あ、っぽい」
「ぽいってなんだぽいって」
「や、何となく。小五位に年上の女性に恋してそうだなーって」
「んなっ!?」
「あれ、もしかして図星…」
「ちげえ!!」

顔赤らめて反論する辺り、もしかしたら本当に図星だったのかもしれない。だけどこれ以上からかうのもあまりに酷なので、その辺で切り上げて未だに言い争いを続けている隆也の元へ赴いた。

「隆也、まだ言ってるの?」
「んあ?だってよ、お前もそう思うだろ」
「別に今までに恋したことが無くてもいいじゃないか、って?」
「ああ」
「うん、私もそう思う」
「ええ!?」
「嘘…!」

私の発言に栄口君と水谷君が目を見開く。そして同時に大きな声でこう言い放った。


『珍しいカップルだな』と。

しかし、そう言われてもそう思うんだから仕方ない。恋って強制的にするものではないと思うし、ましてや情緒面の問題などは人それぞれだ。
だからもう私達はお互いに見合わせて、肩を竦めることしか出来なかった。



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