どれほど歩いただろうか。
 見覚えのある児童公園の中に、美紗が求めていた人間を捜し当てた。
 彼は古びたベンチに座り、ぼんやりと空を眺めている。
 美紗は躊躇いつつも、公園の中へと足を踏み入れる。
 青年は公園には入らず、その場に立っていた。
 美紗と彼の距離はゆっくりと、だが確実に縮まってゆく。
 期待と不安、各々の感情を抱きつつ、美紗は彼の前へと辿り着いた。
「――和仁(かずひと)」
 美紗は彼の名を呼ぶ。
 彼――和仁は空を眺める事だけに集中していたようで、美紗の出現には相当驚いていた。
「美紗……」
 和仁の口から紡がれる美紗の名前。
 改めて呼ばれるのは、随分と久しい気がする。
「隣、いいかな?」
「え、ああ」
 和仁の了承を得て、美紗は隣に腰かける。
 だが、座ったはいいものの、どう切り出して良いものかが分からない。
 突然訊くのもどうかと思う。
 だからと言って、黙っていたままでは、ただ時間ばかりが過ぎてゆくばかりである。


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