見上げた空は蒼い、泉の碧さをより一層引き立たせるように。

自分の髪の色も泉と同じ碧、目線を下げると水面に映る額の宝石がきらり、光った。


「…水が貰えるのは僕が気に入ったほんの一握りの人間だけ、か」


それは風のように柔らかく消えていく声。

コトノハの泉、何処かの森の奥深く…と人間の間で噂されている自分の話題をフォルテュナは楽しげに口ずさみ。

又、男が一心不乱に水を飲む姿に確かな笑みを浮かべていた。















そして。



「…っ、かぁー!!生き返るぜコンチクショウ、やっぱ人間の体内は水で出来ているって本当だな!」



存分に水を飲んだ男は先程までの死にそうな姿とは想像もつかない程に、生き生きとした声でフォルテュナに何度も礼を言う。

それに対し、フォルテュナは不敵な笑みのまま浮いた身体で水面を平行移動し…音もなく男に近付いた。

目と鼻の先、至近距離で男を見下ろして。


「良かったね、…で、君はこの泉がどんな効力を持つ泉か知ってるの?」

「は?んなの、知るわけないだろ。俺はこの森で一人、武術を極める為に修行を」

「ふふ、そう。それは残念だったね、君の夢が簡単に叶う方法がその柄杓の中にあったのに」

「へっ?」


言ってフォルテュナは男の手から柄杓を奪う、するとたちまちに柄杓は銀の光を瞬かせて消えた。


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