「――なら、俺はどうしたらいい……?」
 容浚は苦しげに言った。
「俺はこの数年間、自分を呪いながら生きてきた。
 血に汚れた手を眺めながら、何故、俺は死ねないのかと……。
 いつも奥底に残るのは、死んだ者達の断末魔の叫び。――そして、なかなか死ぬ事の出来ない、自分に対する嫌悪感だった……」
 そこまで言うと、彼の瞳に熱いものが込み上げてきた。
 荒野の上に膝をがくりと落とし、嗚咽を漏らした。
 大の男が泣くなど恥晒しも良いところであるが、今の彼は、そんな事を考える余裕がなくなっていた。
 泣き続ける容浚を、少女はどう思っているのか。
 きっと、心底呆れ返っているだろう。
 そう思っていたのだが。
「――やっと、本音を口に出来たようね……」
 先ほどの冷たさからは想像も出来ぬほど、柔らかく包み込むような口調で少女は囁いた。
「酷い事を言ってごめんなさい。でも、ああでも言わないと、あなたはずっと、自分の殻に閉じ籠ったままだと思ったから……。
 あなたには、生きる資格がある。――いえ。どんなに苦しくとも行き続けねばならない。
 それが、あなたに科せられた、死者に対する“贖罪”よ」
 少女は容浚の前に跪くと、そっと彼を抱き締めた。
 懐かしい香りが仄かに鼻をくすぐる。
 やはり、この少女は――


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