4
同時に、彼は驚愕した。
(――ま、まさか……)
信じられない思いで、何度も目を瞬かせる。
そこにいたのは、亡くなったはずの美澪。
いや。正確には“美澪に似た少女”だった。
よく似てはいるが、その少女にはあどけなさが残っている。
容浚を見つめる瞳も、どこか他人を見つめるような冷たさを感じた。
「君は、誰なんだ……?」
やっとの思いで訊ねた。
少女は彼を睨んだまま、何も言葉を発しない。
暫しの間、沈黙が流れる。
「――あなたは」
黙り込んでいた少女が、初めて口を開いた。
「私にどんな答えをお望みなのかしら?」
「望み?別にそんなものはない。ただ、純粋に訊ねてみたかっただけだ」
「純粋に……?」
容浚の答えに、少女は鼻でせせら笑った。
「よく言えるわ。体から血生臭さをぷんぷんさせているくせに。
しかも今になって、棄てた故郷に舞い戻ってくるなんて……。偽善もいいところだわ」
少女の言葉一つ一つが、刃となって彼の心に突き刺さる。
故郷を棄てたつもりはなかった。
だが、結果的にはそうなってしまったのだ。
この村で生き残ったのは、彼一人。
死者から怨まれても仕方のない事だろう。
- 19 -
しおりを挟む
[*前] | [次#]
gratitudeトップ 章トップ