ちょうど今から十年前、国を巡っての戦が繰り広げられた。
 むせ返るような血の臭い、逃げ惑う人々の悲痛な叫び声。
 想い出しただけでも胸が締め付けられる。
 長きに渡った争いは終結したものの、それでも、大切な者を失った心の傷は、決して癒える事がない。
 彼――容浚も例外ではなかった。
 『国のために』と、最初の頃は意気揚々と参戦したものの、戦いを重ねるうちに疑問が湧き始めていた。
 何故、人同士が争わねばならないのか。
 武力を行使するなど、愚かな人間のする事ではないのかと。
 だが、後戻りも出来なかった。
 無我夢中で敵を斬り、その鮮血を身体中に浴び続けた。
 人を一人斬るたびに、ひっそりと懺悔する。
 そんな毎日を繰り返していた。

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