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僅かに張り詰めかかった空気を緩めるかのように、少女は肩を竦めて、微かにおどけた声を出した。
「まぁ、火種を残したのは、私だもの。…偉そうには言えないわね」
「……止める、方法が……」
「ないわ」
「……………そうか」
「……あれは、…教皇の首は、聖地の地中に深く埋もれながらも、きっと生きている。どんな形であっても、と永劫の命を与えたのだもの。…もう私の次元を遥かに超えたモノになるでしょうね。己自身を核として、何を呼ぶかも想定できないほどに」
けれど、と少女は言の葉を紡ぐ。
それはとてもやさしく、雄大な音色を孕んで。
「けれど……、それもまた…私はただ、見届けることにする」
ふう、と今度は意図的に吐息を空へ投げかける。
幼子が、白く煙る自分の吐息を楽しむように。
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