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肌を突き刺すような痛みを伴う寒さに、目を細めながら。
互いに目線を星に投げたまま。
彼らは意思を交わす。
「聡明ね、リューナート司教。……私はもう何も出来ないのよ。たとえ、この世の破滅が訪れたとしても」
ふわり、と少女が微笑んだ。
今はもう、あの血のような赤を失ったというのに。
一瞬だけ、瞳が禍々しく揺らいだように、感じた。
「…私は今度こそ、それを笑って受け止められるのよ。…素敵だわ」
「……ミアリ」
「冗談よ。…怖い顔をしないで。……ただ、そうね。……それもまた、運命であるとしたら?」
この世界の終焉を見たいと。
灰と化した世界を見せたい、と。
少女は泣くように叫んだ。
けれど、今はこうして肩を並べて、空を仰ぐ。
一陣の風が、ふたりの間を過ぎ去って行く。
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