ボソリと呟くように返事をするのも、彼ならでは。
ミアリもすっかりそれに慣れて、今では単語で彼の意図をくみ取れるほどだ。

「………戻ろうと」

思う、という語尾を呑む。
主語もなく、また必要であろう言葉すら不足している。

僅か前に生まれたばかりの意思は、夜に隠されそうなほどに儚く。
けれど、言葉に形どれば、それは強固なほどに硬質さを増した。

「……もう、あそこには何もないわ、リュー。……壊した私が言うべきことではないかしらね」

リューナートが同じように空へ目線を投げながら零した言葉を、少女は的確に捉えた。

金の男が戻ると言った場所が、室内ではなく、かつて所属していた教団であるというこも。

金色と銀色の髪が、冬の風に揺れる。
サラサラと、髪の先端から寒さが忍び寄って、凍らせようとしている。

「……貴方は…気が付いているんだろう」

「…………ええ」


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