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そうして、こちらもまた音もなく歩み寄ってきた小さな影。
細い肢体にくるりとストールを巻きつけて、いかにも寒そうに肩をすぼめている。
彼女の声に、思考を分断させる。
特にそれに固執することなく、あっさりと捨て去る。
金色の青年がゆったりと振り返って、少女を捉えた。
リューナート・ガルド。
かつて稀代の祓魔師と言われた男の、異母弟。
整った顔立ちには、いつもながらに表情が浮かばない。
「…………ミアリ」
コトコトと、軽い足取りでミアリと呼ばれた少女が歩み寄ってきた。
小さな田舎町の教会は、ほんの少しばかり周囲に軒を連ねる家々よりは小高い丘にある。
同じ屋根の下でともに生きるこの少女は、ひどく美しい。
禍々しさを捨て去ってもなお。
同敷地内の庭、浅く掠れたような芝を踏みながら、ミアリはリューナートの横に並び、溜息を零した。
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