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家に着くと、ホッとするような温かさが蒼介を包み込んだ。
「お帰りなさい」
真っ先に出迎えてくれたのは、美雨(みう)の愛らしい笑顔だった。
七年前に運命的な出逢いを果たし、今は蒼介の妻として、彼の隣に添い続けている。
「ただいま」
美雨の笑みに応えるように、蒼介もまた笑む。
「あ、蒼介」
蒼介と並んでリビングに入りながら、美雨は少女のように瞳を輝かせながら言った。
「明日の約束、憶えているわよね?」
「明日……?」
蒼介が眉を寄せながら首を捻ると、美雨は唇を尖らせた。
「もう! 先週から言ってたじゃない! 明日のお休みは、一緒にお花見に行こう、って。大体、言い出しっぺは蒼介なのに……」
恨めしそうに美雨に睨まれ、蒼介は狼狽した。
「す、すまんっ! つい……。でも、大丈夫だ。明日はちゃんと空いてるから」
「――本当に……?」
疑わしげに見つめる美雨に、蒼介は「本当だ」と強く頷く。
「ここずっと、忙しくて構ってやれなかったからな」
蒼介はそう言うと、美雨の頭に手を載せた。
「――子供扱いしないで下さい」
不満げに口にしながらも、美雨はまんざらでもないようで、蒼介の手を振り払おうとはしなかった。
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