ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ








「す、すみません!アルヴィル様!
わ、私……あの……
で、でも……」

着いたのは、私がよくお小言を食らうアルヴィル様の執務室だった。



「落ちつきなさい、ミト…
落ちついて、これを見るのです。」

アルヴィル様は、地上の様子をのぞき見る時によく使う水鏡を指さされた。
大理石で作られた脚の付いた大きな器状のもの…
そこに張られた水面がゆらゆらと揺れ、映し出されたのはあの丘…
ロザリーがいつも祈りを捧げていたあの場所…
私が最後にロザリーを見たあの日の光景だった。

アルヴィル様がすべてを知っておられたことを私は悟った。
私が天界を抜け出して、度々地上を訪ねていたことを…
緊張と罪悪感と不安が私の胸の中を埋め尽した。



「アルヴィル様…あの……」

指導師様は黙ったままでしゃべるなと言わんばかりに首を振り、水鏡の方を示された。



仕方なく、私は水鏡に目を戻した。
そうだ…ロザリーはあの時、夜空を見上げ、とても嬉しそうに微笑んで駆け出して…
私が見たのはそこまでだったけど、水鏡はその後も続き…



一旦、家に戻ったロザリーは、またすぐに外へ飛び出した。
さっきよりもさらに早い勢いで、どうやら町の中心部に向かっているようだった。
しばらく走り続けると、あたりの明るさが急に増した。
ロザリーの家の周辺よりもずっとにぎやかなその場所は、商店や飲食店の集まる場所で、まだ人通りも多かった。
町では近々祭りがあるようで、広い通りには、祭りを知らせる看板が立てられていた。
その準備のためなのか、かいがいしく働く人々が多くいて…
なぜ、こんな町の様子を見せられるのかと不思議に思いながらも、真面目に見ていないと叱られると思い、私は水鏡をみつめ続けた。



「ああっ!!」



私は思わず声を上げ、目をきつく閉じた。
なぜなら…そこに突然思い掛けない光景が映し出されたのだから。
酒瓶をいっぱいに積んだ荷車の前に息を切らしたロザリーが急に飛び出して…ぶつかった衝撃で転んだロザリーの上に荷車の酒瓶が崩れ落ちて…
割れたビンの欠片がロザリーの身体に突き刺さり、おびただしい鮮血が噴き出してあたりが赤く染まって……






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