ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ



(あの子のほかには誰もいないようだけど、ここには子供達だけで住んでるのかしら?)



私がそんな疑問を覚えたちょうどその頃、扉の開く音がして、それに気付いた少女は顔を輝かせて立ち上がる。



「おかえりなさい!」

「ただいま、ロザリー。」



少女は若い女性の胸に飛び込み、女性は少女を優しく抱き締めた。
少女の嬉しそうな顔を見れば、その女性が母親だということは容易に察しがついた。
きっと、あの少女…ロザリーは、母親が留守の間、幼い弟の面倒をずっとみていて、弟を寝かし付けてからあの丘に祈りを捧げに行ってるのだろう。
幼い弟の足ではあの場所までは時間がかかるから…
母親はこんな時間まで働いているから、ロザリーがそんなことをしていることをもしかしたら知らないのかもしれない。



母親が着替える間、ロザリーはかいがいしく動いて、食事の用意を始める。
見るからに具の少ない野菜のスープに、干からびたパンとりんごの欠片。
母親がそれを食べる様子を見ながら、ロザリーはとても幸せそうな顔をして…
二人は他愛ない会話を交わし、朗らかに笑う。
こんな貧しい暮らしでも、二人の顔には幸せが溢れているように見えた。
世の中には、裕福で満ち足りた暮らしをしていても、不平不満ばかり言う人間がとても多いのに…

私は、なんとかこの健気なロザリーの願いを叶えてあげたいと思った。
どういう事情なのかはわからないけど、父親が戻ってくればこの家の暮らしはもう少しマシなものになって、そして家族はもっと幸せになれる筈。
ロザリーもそう思うから、毎日祈りに行ってるのかもしれない。
だけど、地上へ降りてはいけないという規律を破り、勝手なことをしている手前、ロザリーの願いを天に報告するわけにはいかない。
だけど、なにか別の方法でロザリーの力になれることがきっとあるはず…



(決めた!
私、絶対にあなたの願いを叶えてみせる!
約束するわ!)



私のそんな想いにロザリーに気付くことはないけれど、私はそう考えることで自分の意志が強くなるのを感じてた。


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