ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ







(もうそろそろ来る頃ね…)



私は、とある町のはずれにある大きな木の枝にそっと舞い降りた。
高台にあるこの木からは町の様子が一望出来る。
ここは、穏やかに時間が過ぎるのどかな田舎町。
都会の人間達に比べると、やはりこういった町の人間達の方が、神や天使に救いを求める機会が多く、その声も聞こえやすい。



(都会の人間達は私達よりも、物やお金を信じてる。
町も人間の心の騒がしくて落ち着かないわ…)



この町に初めて来たのは、確か一月程前のことだった。
いつもと同じように天界を抜け出して、あちこちを散歩していたある日、とても澄んだ声が聞こえて来た。
子供の声は大人よりも聞こえやすいものだけど、その中でもその声はなぜだか特に興味をひかれた。
声の許を辿ってみると、そこにいたのはまだあどけない顔をした女の子だった。



「どうかお父さんと早く会えますように…!」



どんな事情があるのかは、私にはまだよくわからなかった。
ただ、ぼんやりと優しそうな笑顔の男性の顔が私の頭に浮かび、きっとそれがあの少女の会いたがってるお父さんなんだろうと思った。
芝の上に膝を着き、夜空を仰いで女の子は一心に祈りを捧げ、そして戻って行く。
雨の日も風の日も、一日も欠かすことなく…
この場所から町までは、子供の足ではそれなりの時間がかかると思う。
薄暗がりの中、ランプも持たずに少女はここまでやってくる。
月と星の明かりだけを頼りに…
どうして、あんな小さな子供がこんな夜更けに、こんな所まで来るのだろう…?
そのことが気にかかり、私はある日そっと少女の後をつけた。
一歩一歩踏みしめるようにゆっくりと、時間をかけて少女が戻った先は小さく粗末な家だった。
扉を開ける時にも音が立たないように気を遣い、家の中に入っても少女は足音をしのばせそろそろと歩き、奥の小部屋の扉を小さく開いて中をのぞいて微笑んだ。
暗い部屋のベッドには、あの子よりももっと小さな男の子が眠ってた。
少女は満ち足りた顔でそっと扉を閉め、別の部屋で繕いもののようなことをしていた。


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