ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ



「家があるじゃないか!
……あぁ、助かった!」

家に向かって歩き始めたアルルの肩を、ヴェリエルが慌てて引き止める。



「アルル様!危険です!
こんなあやしい森の中に住んでるなんて、どう考えても普通じゃありません!」

「……普通じゃない?
よく言うよ。
あんただって、普通の天使じゃないじゃないか。
あんな低い所しか飛べない天使なんて、どう考えても普通じゃない!」

アルルの辛辣な言葉がヴェリエルの胸をぐさりと貫く。



「……ふ…普通じゃ…ない……」

ヴェリエルは、アルルの言葉を放心したように繰り返す。



「あぁ、今日は本当に酷い目にあった。
もうくたくただよ。」

「あ、アルル様!
だめです!だめですって…!」

傷心のヴェリエルも、声をひそめるクラウドの制止も気に停めることなく、アルルは家に向かって歩き出した。



「こんばんは!開けておくれ。」

アルルは乱暴に扉を叩いた。



「誰じゃな…こんな夜更けに…」

中から姿を現したのは、腰の曲がった老婆だった。



「私達、森で迷って困ってるんだ。
今晩一晩泊めておくれよ。」

「迷ったって……よくここに辿り付けたもんじゃな。」

「そうなんだよ。ここはなんだかおかしな森でさ。
長い間うろうろしたからもうくたくたなんだ。」

「当たり前じゃ。
ここは迷いの森。
足を踏み入れた者は、二度と出ることは出来んのじゃ。」

「道理で…そうじゃないかって思ったんだ。
そんなことより、婆さん、なにか食べるものはあるかい?」

アルルは、そう言いながら勝手に部屋の中へ入って行く。



「こ、こりゃ!わしはまだ入って良いとは…」

老婆は扉を開けたままで、アルルの後を追いかけた。



「あ……ヴェリエル!天使様が中へ入って行かれた!
何かあっては大変です。
私達も行きましょう…!」

「ふ…普通じゃ……」

クラウドに手を取られ、放心したヴェリエルも家へ向かった。


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