ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ



「待って!!」

甲高い声と共に、小さな子供が二人の傍に飛び出した。



「ディランではないか。どうかしたのか?」

「……やっぱりそうだ!
ギディオンさん、僕、昨日言ったでしょ!
殺されようとした所を、人間の女の子に助けられたって。
この子だ。昨日、僕を助けてくれたのはこの子だよ!」

少女は、涙で潤んだ瞳でその子の顔をじっとみつめる。



「助けたって……あなた、まさか昨日の…」

「そうだよ!僕だよ!」

少女の前で、子供はあっという間に魔物の姿に変わった。



「あ!あなたはあの時の…!!」

少女の脳裏に昨日の出来事がまざまざと思い出された。
散歩に来ていた娘の前に、突然、飛び出して来た小さな魔物。
供の者が剣を振り下ろそうとした時に、それを止めたことを…



「ギディオンさん、どうかこの人間を許してあげて!
この人間はきっと純粋な心の持ち主なんだ。
僕は命を救われたのに、そんな人を殺してしまうなんてあんまりだよ。」

「ディラン、無理を言うな!
この森の秘密を知った者は何人であろうとも許されないんだ。
そんなこと、おまえだって知ってるだろう?」

先程の男が、ディランを諌めるため口を挟んだ。



「……わかってるよ。
だったら、この森で暮らさせれば良いじゃないか。
どうせ、人間にはこの森を出ることは出来ない。
一生、ここで暮らさせたら、誰にも言うことは出来ないし、家族にも誰にも会えない。
それは十分罪滅ぼしになるじゃないか!」

「ディラン!聞き分けのないことを言うんじゃない!」

男は、ディランに手を振り上げ、その手をギディオンが制した。



「やめろ、ライアン。
……ディランは恩義を忘れない素晴らしい子だ。」

ギディオンの穏やかな微笑みにディランは嬉しそうな表情を浮かべ、ライアンはそれとは裏腹に苦い顔に変わった。



「……おまえはどうしたい?
ここにいても、おまえは一生ここから出ることは出来ない。
家族や友人とも会えず、連絡を取ることも適わん。
一生、ここで暮らすか、それともそんな絶望的な人生を過ごすくらいなら、いっそ潔くその命を捨ててしまうか……その判断をおまえに託そう。」

「ギディオン!」

ギディオンは、非難めいた声で自分の名を呼んだ男に向かって穏やかに微笑む。



「……私……死にたくはありません。
両親には可愛がってもらうばかりで何一つ恩返しは出来なかったけど…それならば、与えられた命を大切に使いたい。
どんな境遇になろうと、この命が尽きるまで大切に使いたい……」

「……そうか…わかった。」

涙混じりの少女の訴えに、ギディオンは深く頷いた。



- 191 -

しおりを挟む
コメントする(0)

[*前] | [次#]

お礼企画トップ 章トップ

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -