ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ



少女には、一軒の空き家が与えられた。



「今日からここがおまえの家だ。
さて……おまえについて少し教えてもらおうか。」

キャロラインの向かい側に座ったギディオンがゆっくりと話し掛ける。



「私は……」

少女は、名をキャロラインと言い、年は十六、ずっと東のプラニクル王国の姫だと語った。
家族と共にこの近くの別荘に遊びに来ており、供の目を盗んで一人で抜け出して来た所、この森に迷いこんだのだという。



「これからおまえは死ぬまでこの森で過ごすことになる。
ここは人間の世界とは違う。
おまえは、人間の世界では特別な暮らしをしていたようだが、ここでは他の者と同じだ。
誰もおまえに傅く者はおらん。
基本的なことはこの森の掟に従ってもらうが、細かいことはすべて自分自身で考え、行動するのだ。
特に不自由なことはないと思う。
……ただし、この森から逃げ出そうと考えても無駄だ。
人間には決して抜け出す事は出来ない。
そのことを早くに受け入れた方がおまえのためだ。
それと……万一、問題を起こすような事があれば、その時は……」

ギディオンは、キャロラインの瞳をのぞきこんだ。
その視線は穏やかな声とは裏腹なとても冷酷なもので、キャロラインはその重圧に耐えきれず視線を逸らして俯いた。



「……わかりました。」

「では、私はこれで……
とりあえず必要なものは後で届けさせる。」

「ありがとうございます。」

席を立ち扉に向かって歩き出したギディオンの足が、不意にぴたりと停まる。



「……ディランを助けてくれてありがとう。」

「え……?」

思いがけないギディオンの言葉にキャロラインが戸惑っているちに、彼は家を出て行った。



(……とりあえず命は助かったけど…
私はこのままここで暮らしていくのね…
魔物達の住むこの森の中で……)



これから先のことを考えると心細さと悲しさで、キャロラインの瞳からは熱いものが流れ出した。
だが、こんなことになったのも、自分が巻いた種だということはキャロラインにもよくわかっていた。
いつもいつも注意されていたのにも関わらず、それを聞き入れることなく、勝手に別荘を飛び出した自分のせい。
自分の軽率な行動のせいで、どれほどの心配をかけ迷惑をかけてしまったかということを考えるとキャロラインの瞳から溢れる涙はますます激しさを増し、キャロラインはベッドに突っ伏し、子供のように声を上げて泣いた。



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