出会い6
「ねぇ、か…じゃない、ルディ。
これからどこに行くの?」
どうにか同行することを許されたカパエルは、かっぱにされたという酷く重大なことをあまり気にしていない様子で、ルディに話しかけた。
「あてなんかあるかよ。
そういえば、おまえ…金は持ってるのか?」
「全然持ってないよ。」
「……情けない奴だな。
おまえ、金もなくてどうするつもりだったんだ?」
自らも無一文だったことはすっかり棚上げで、ルディはカパエルの返事に眉をひそめる。
「新しい師匠を探して、そこで住み込みで修行しようと思ってたんだ。」
「その師匠がすぐにみつかるとは限らないだろ!
師匠がみつかるまでの間はどうするつもりだったんだ?」
「あ…そうか…!
か…じゃない、ルディは頭が良いんだね。
僕、そこまで気が付いてなかったよ!」
「……あのなぁ…
魔術師自体、そんなにいないんだぞ。
運良くたまたま出会えたとしてもその魔術師が弟子を取るかどうかわからないんだからな。」
「言われてみればその通りだよねぇ…
じゃ、これからどうするの?」
「どう…って……」
ルディは、ゆっくりと腕を組み、その先の言葉は途切れた。
カパエルは、黙ったままでルディの顔をじっとみつめる。
「……とりあえず、働かせてもらえる所を探すしかないだろうな。」
「そうだね。
あぁ〜、僕、ルディに出会えて本当に良かったよ〜…
僕一人だったら、もっと困ってたと思うよ。」
ルディは、カパエルの言葉に驚いたような…呆れたような顔を向けた。
「おまえなぁ……
よく考えてみろよ。
おまえは俺のせいでかっぱにされたんだぞ!」
「うん。僕もさっきはそう思ってルディのことを憎らしく思ったんだけど……
でも、わかったんだ…!
君は僕の修行のため、わざとこんなことをしたんだね!
どんな環境にも耐える精神力っていうのが、魔術の基本だもんね。
それに、かっぱになんて、なりたくてもなかなかなれるチャンスなんてないよね!
僕って、もしかしたらすごくラッキーなんじゃない??」
ルディはカパエルの恐ろしいまでのポジティブシンキングに言葉を失った。
「やっぱり、そうだったんだね!」
カパエルは、ルディが黙りこんだ理由を勝手に良い風に解釈し、嬉しそうに微笑んだ。
(……あほや……こいつ……ほんまもんのアホや…)
ルディはなぜだか関西弁でそう思った。
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