出会い3
かっぱはまたも小さな声で呪文を唱え始めた。
そして空を指差すと、突如現れた鉛色の雲が太陽を遮り、その中から巨大な水柱が轟音と共に落ちてきた。
「び、ぴぇぇぇぇ〜〜!」
ルディは何がなんだかわからずに、おかしな声で叫び続ける。
炎は一瞬にして消えた……
あたりに漂う焦臭いにおいが鼻をつき、白い煙がもやもやと立ち込め、そして、そこには腰が抜け、あごがはずれたびしょ濡れのルディがいた。
「はっはふん、ははあふぉふぁ…(かっぱくん、またあごが…)」
かっぱは黙ってルディのあごを入れ直してくれた。
「君、かっぱのくせにすごいじゃないか!」
かっぱのこめかみがピクピクしたことにルディは少しも気付かない。
「ねぇ、君、どこで魔術を習ったの?
魔法学校?
いや、そんなことないよね。
かっぱは入学なんてさせてもらえないよね。」
さらに、かっぱの眉間に深い皺が刻まれたことにルディはなおも気付かない。
「……その通りさ。
俺はかっぱだから、魔法学校にも入れてもらえず、弟子入りもさせてもらえず、だから、独学でここまでやってきた。」
「えっ!
独学なの??すごいじゃないか!
自分一人でここまでやれるようになったなんてすごすぎだよ、かっぱのくせに……」
かっぱの肩がぷるぷると怪しげに震えていることに、ルディはいまだ気付かない。
「……そうだ。
つい最近、覚えたばかりのすごい魔術を見せてやるよ。
まだ使ったことはないから、うまくいくかどうかはわからないけどな。」
「わぁ!楽しみだ!
見せて、見せて!」
「これには少しおまえの手助けが必要なんだ。
俺の前に立って、目を閉じて俺の両手とおまえの両手を合わせてくれ。」
「こう?」
ルディは言われた通りにかっぱと手を合わせて目をつぶる。
「そうそう。
あとは、俺がもう良いっていうまでそのままじっとしといてくれたら良いんだ。」
「わかった。」
かっぱは、ルディと両手を合わせたまま、なにやら呪文を唱えている。
「あっ……」
ルディは手の平がビリビリとしたような感触を感じた。
「……もう良いぞ。」
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