出会い2
言われるままにルディが後ろを向いてしばらくすると、いつの間にかかっぱは緑色のローブを着てルディの前に立っていた。
「ひふほはひ…?(いつの間に…?)」
「なんだ、おまえ、そのしゃべり方は…」
かっぱはルディの首に腕をまわす。
「ひ〜っ!ほろはれる〜!(ひ〜っ!殺される〜!)」
ガコッ!
「いてっ!」
「おまえ、他に食べる物は持ってないのか?」
「持ってないよ…あれ?あごが…」
はずれた顎が元に戻っていることに、ルディは気付いた。
「ちぇっ!シケた奴だな……」
「よく言うよ!僕なんて朝から何も食べてないのに、酷いじゃないか!
…っていうか、君…もしかしてかっぱ?」
「……今頃、そんなこと言うなよな。
あぁ、そうさ!それがどうした!かっぱで悪いか!」
かっぱは尖った口をさらに尖らせ、声を荒らげる。
「悪いなんて言ってないよ。
かっぱはもう絶滅したって聞いてたから感激してるんだ。
しかも、かっぱがこんなに普通にしゃべれるなんて知らなかった!
ねぇ…握手してもらって良い?」
「握手だと?俺はそんじょそこらのかっぱじゃないんだ。
こう見えても魔術も使えるんだからな。」
「え〜〜っ!本当?
すごいじゃない!!
僕、実は魔術師になるのが夢で、今、魔術の師匠を探して旅をしてる所なんだ。」
「なるほど。それで、俺の弟子になりたいってわけか?」
「それはやめておくよ。
だって、師匠がかっぱだなんて、なんかかっこ悪いもん!ぷっ」
カッティーン!!
かっぱの頭のどこかでブチッと何が切れる音がした。
「……ほ、ほう…
それでおまえ、どの程度の魔術が使えるんだ?」
かっぱは怒りに歯を食いしばりながらも、冷静に話す。
「ようし、じゃあ、特別に見せてあげるよ。
これが十年間の修行の成果だ。
はぁぁぁぁ〜!
『モエ〜〜〜!』」
ルディの人指し指にぽっと小さな炎が灯った。
「……マジ?」
「マジだよ。びっくりした?」
かっぱはルディに哀れむような視線を投げかけていることにもルディは気付かなかった。
かっぱは溜息をひとつ吐き出すと、目の前の野原の方に身体を向け、なにやらブツブツと呪文を唱え始めた。
「……どうかしたの?」
ルディの声には何も答えず、かっぱが気合いと共に腕を振り下ろし一点を指差すと同時に、一瞬にしてめらめらと赤い火が燃え上がり、野原中が火の海と化した。
「あわあわあわ…」
またも腰を抜かしたルディは、燃える火の海に向かって『ズー』の魔術を発動したが、そんなもので火が消える道理もない。
「か、か、かっぱくん、は、早く火を消さないと…」
「今、消すから待ってろって。」
かっぱは余裕でそう答えた。
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