修行4


師匠の屋敷は快適で立派なものとなり、畑には質の良い野菜や果物がたわわに実っていた。
ルディが沢から水路を作って水をひいたため、もう水を汲みに行く手間もいらない。

さらには、ルディの掘った所から温泉が吹き出したため、温泉施設を作り、ロディックには入泉料までもが入るようになった。

この温泉は病気に効く、美肌になれる秘湯ということで温泉マニア達の知るところとなり、いつしかルディの住む町までもが発展を遂げていた。



「ルディよ……よくぞここまで頑張った…
ついに、おまえに魔術を教える時がやってきた!」

この十年で体重が三倍になってしまったロディックが、息をきらしながらやってきた。



「わしは、しばらく診療所にいくことになった。
だから、このあとおまえは他の師匠について学ぶんじゃ!」

「そんな!
僕は、師匠の元で修行をしたいんです。」

「無茶を言うな。わしは体重を半減させんと命の保証はないと言われておる。
これもすべてはおまえの修行に付き合うために、自分の仕事もやめて、わざと食っちゃ寝の怠惰な生活をしてきたせいなのじゃぞ。」

「師匠……」

師匠の言葉に、ルディはそっと目頭を押さえた。



「わしはそれほどまでにおまえのことを考えてきたんじゃ…感謝するのじゃぞ。」

「し、師匠〜〜〜!」

感涙にむせぶルディに師匠はふんぞり返って頷く。



「良いか……よく見るのじゃぞ!
はぁぁぁぁぁ〜〜〜!」

ロディックは大きく息を吸い込む。



『モエ〜〜〜!』



「おおっ!!」

師匠の人指し指の先に、爪の大きさほどの小さな炎がともった。



「覚えたか?
これが究極の炎の魔術『モエ』じゃ。
そして、これが……
はぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜!」



『ズー!!』

今度は、反対側の師匠の指先からちょろちょろと貧弱な水が流れ出した。



「見たか!
究極の水魔術『ズー』の威力を…!!」

「す、素晴らしい!!」

ルディは感動に唇を震わせながら、涙を流した。



「これだけ覚えておけば、あとはそこいらのへっぽこ魔術師に弟子入りしても通用するだろう。
頑張るのじゃ!」

「師匠……」

「それから、今までの修行の褒美として、畑の野菜を好きなだけ持っていって良いぞ。」

「そ、そんな……
こんなによくしていただいた上にお野菜まで……」

「良いのじゃ…
わしは太っ腹じゃからな。」

そう言いながら、ロディックは自分のメタボな腹をばしっと叩いた。



「師匠〜〜〜」


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