修行3


「おっ!おまえは先日の子供ではないか!
本当に来たんだな。
よし!では、まずこれを渡しておこう。」

ロディックがルディに手渡したやけに分厚いノート……
それは魔法の書……と思いきや、表紙にはへたくそな字で「お仕事帳」と書いてあった。

ルディがページをめくってみると、弟子としての心得や、朝起きてから夜寝るまでのスケジュールとその内容がびっしりと書きこまれていた。



「あ、あの……ロディックさん……」

「馬鹿ものっ!
誰に向かってそんな口をきく!
『師匠』と呼ばんか!『師匠』と!!」

「ご、ごめんなさい。
師匠!僕は魔術を習いに来たのですが……このノートには魔術のことが何も書いてありません……」

ロディックの剣幕にたじたじになりながらも、ルディは疑問を老人にぶつけた。



「愚か者!!
こういう日々の鍛練が出来ぬ者に魔術が使えるようになるものか!
わかるか?子供よ……
魔術というものは精神力のないものには使えるものではないのだ。
どんな辛いことにも文句を言わず耐える精神力……それこそが立派な魔術師への第一歩となるのじゃ!」




(そ、そうだったのか…!!)




「わ、わかりました。師匠!
ぼ……僕、全力で頑張ります!」



(これはすべて魔術に必要なことだったんだな。
さすがはロディ…じゃない、師匠だ…!
明日から精一杯頑張るぞ!!)



「これ、子供よ……」

「あの…師匠……
僕はルディです。」

「名前などどうでもかまわん!
何をぼさっとしておる。
今の時間にすることをちゃんと読まんか!」

「えっ!?
仕事は明日からじゃないんですか?」

「たわけ者!
一日早く修行を始めたらそれだけ早く魔術が覚えられるじゃろう!
時間を無駄にするな!!」

「は、はいっ!!」








ルディの一日は実に過酷なものだった。
ニワトリより早くに目を覚まし、沢まで何度も水を汲みに行く。
昼間までは農作業に精を出し、山に自生する野草や木の実を採っては町に行ってそれらを売りさばく。
夜は遅くまで師匠のマッサージや内職に励んだ。




ルディが大きくなるにつれ、まかされていた畑はだんだんと広くなり、採れる作物の量も増えていった。

ルディはさらに大きくなると、木を斬り倒し、三年の歳月をかけて師匠の新しい家を建てた。

余った木材を使い、割り箸や民芸品を作り販売した。



そんなこんなで気が付けば、ルディが弟子入りしてから早や十年の歳月が流れていた……



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