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*
「ほら、ここだよ。」
「ここが?
……すごいや!大きな家だね!」
僕の身体は、わずかな後遺症さえも残さず、見事に修復された。
退院した僕は、以前暮らしてた家から少し離れた場所に新しい家を買った。
前よりも一回り大きな家だ。
オルガかいなくなったのに、なぜ、以前よりも大きな家をと誰もが不思議に感じたことと思う。
僕は、トーマスを養子として迎えた。
同情しているだけかもしれない。
オルガがいなくなった寂しさをなんとか埋めようとしているのかもしれない。
勝手に、妄想めいた不思議な縁を感じているだけなのかもしれない。
そんなエゴで子供を引き取って良いものかと考えたこともあったが、やはり僕は感情の命ずるままにトーマスを引き取ることにした。
「お帰りなさい。」
開かれた扉の奥から顔を出したのはバーバラだった。
僕は、トーマスを引き取りたいこと…そして、バーバラにも一緒に暮らしてほしいということを伝えた。
オルガが死んでしまった以上、私のことをもう心配する必要等ないとバーバラは拒絶した。
だけど、僕はそんな事では諦めなかった。
「僕がオルガと結婚した時からあなたは僕の母親になったんです。
それに…僕が事故にあって死にそうになった時…あなたは駆け付けて下さったじゃないですか。
オルガが死んでしまったことで、僕とあなたの縁が切れたと言われるのなら、あなたはなぜ来て下さったんですか?
なぜ、僕が助かった時にあれほど喜んで…そして、ずっと親身になって世話をして下さったんです?」
「……それは…」
「オルガを失ったのは僕だけではない。
あなたも同じだ。
そして…あのトーマスも一人ぼっちだ。
血の繋がりはなくたって、家族として生きていける事をあなたは誰よりご存知のはず。
それを、トーマスにも教えてやってほしいのです。
僕だけでは不安ですから。
どうか、僕を助けて下さい。」
「アーロン…」
血の繋がりのない僕達は、これからここで血以上の繋がりを作り上げていく。
すぐには無理かもしれないけれど、いつかきっとそれが出来ると信じて…
(オルガ…これで良かったんだよね?)
チェストの上で微笑むオルガの写真に、僕は心の中で語りかけた。
(僕は、不幸な人間なんかじゃない…
だって…君と出会えたんだものね…)
〜Fin
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