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「おじちゃ〜ん!」

それから毎日、シスターとトーマスは僕の見舞いに来てくれた。
まだ、前向きになれたわけではない。
今でもオルガの元へ逝きたいという気持ちはあったけれど、それでも、それだけしか考えられなかった以前とは確かにどこか変わって来ていた。



「おじちゃん、これね。
皆で育てた花なんだ。
いつもは売りに行くんだけど…」

「ト、トーマス!」

シスターは、慌ててトーマスの口を押さえた。



僕の推測は当たっていた。
トーマスは、まだ産まれて間もない頃に、修道院の前に捨てられていたのだという。
親の手掛かりとなるものは何ひとつなく、擦りきれたタオルに包まれ粗末なバスケットに入れられていたのだという。



少ないとはいえ…決して楽しいものではなかったとはいえ、僕には家族の記憶があった。
親がどんな人で、自分が何者かということを知っていた。
なのに、トーマスはそんなことすら持ってはいなかった。
オルガに出会うまで、僕は何も持たずに生きて来た…
だけど、トーマスに比べればまだ多くのものを持っていたことに気が付かされた。
トーマスは、自分の名前すら持ってはいなかったのだから…





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