僕は、そしてオルガはやっぱり不幸な人間だったんだ。
よりにもよって、そんな日に彼女が命を落とすなんて…
こんな不運なことがあるだろうか…
不幸な人間のくせに、それをどうにか変えようとした僕への天罰なのか!?



行くあてなどなかったけれど、その時、僕の心はすでに決まっていた。
僕も、オルガの傍に行こう…と。
そして、直接オルガに謝るんだ。
オルガを…僕達の子供の命を助けられなかったことを…!



息が切れる程走り、走れなくなったら歩調を緩め、そしてまた走り出す。
いい年をした大人が子供のように涙を流し、狂ったように走っている僕の姿に、すれ違う人々が奇異な目を向けた。
だけど、そんなこと…もう、どうだって良いんだ。
笑いたければ笑え…
そうだ…僕は笑われて当然な愚かな人間なんだから。

そんなことをしている間に、僕はいつしか見知らぬ町に辿りついていた。
どこかの町の大通りだ。
適当な死に場所はないかとあたりを見渡すが、それらしき場所はあたりには見当たらない…
ふと見上げた空は、いつの間にか薄暗くなり始めていた。
ここがどこなのかわからないのも当然だ。
ぐしゃぐしゃになった僕の頭では、それほど長い間走り続けていたことにも、疲れているのかどうかさえもよくわからなくなっていた。



町を行き交う人々は僕の心の中など知らず、楽しそうに…忙しそうに歩いて行く。
一人でいる者、カップル…家族連れ…
穏やかに見えるこの雑踏の中にもやはり僕のように不幸な人間はいるのかもしれない。
以前の僕のように、そんなことはおくびにも出さず何食わぬ顔でいるのかもしれない。

そんなとりとめのないことを漠然と考えていた時、ボールがころころと転がり、それを追って一人の小さな男の子が車道に飛び出したその最中、運悪く勢いを増した四頭立ての荷馬車が走りこんで来た。




「危ないっ!」



考える暇はなかった。
すぐさま、車道に飛び出した僕の背中に激しい痛みが走り、息が止まりそうになるのを堪え、僕は子供の身体をきつく抱え込んだ。
次の瞬間、おそらく跳ね飛ばされたであろう僕は頭を固い道に強かに打ち付けた。
その衝撃で割れた僕の頭から、生温かいものが顔にどくどく脈打ちながら流れ落ちるのを僕は感じた。



(オルガ…
僕は幸せだ…
願い通り、君の傍に行けそうだよ…
最後の最後で、僕は幸せになれ……た……)




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