(ごめんよ…オルガ……)

小さな墓の前に僕は花を手向けた。




「きっと、オルガは満足して逝ったと思うわ。
あなたと知り合ってからの数年間、あの子は一生分の幸せを感じていたはずよ。」

「……そんなこと…!
彼女はまだ死ぬような年じゃなかった。
僕達は、これから本当の幸せを掴む筈だった…なのに……
僕のせいだ……
あの日、僕がいつものようにまっすぐに帰っていたらこんなことには…」

「アーロン、それは違うわ。
あなたが早く帰ろうと遅かろうと…きっと、あれがあの子の寿命だったのよ。
お医者様もおっしゃってたじゃない。
オルガは、倒れた時に頭を打って、ほぼ即死状態だったって…
だから、苦しむこともなかったし、あなたが帰っていたとしてもきっとどうにもならなかった…」

「そんなことはない!
僕が帰っていたら…僕がすぐに気付いたら、オルガは…オルガは助かったかもしれない…!
……きっと助かっていた!
僕のせいなんだ…僕がオルガを殺したようなもんだ!」

高まる感情と共に込み上げる涙を押さえるだけの理性は、僕にはもうなかった。
オルガが死んでから、僕は毎日がただ苦しくて苦しくて…
自分を責めることと、オルガに詫びる事しか出来ず、自分で自分の感情がコントロール出来なくなっていた。



「アーロン、そんな風に考えるのはお止しなさい。
そんなこと言ったら、天国であの子が悲しむわ。
……アーロン…実はね…このことはあなたに言おうかどうか迷ったのだけど…
実はね……あの子……妊娠していたの。」

「えっ…!?い、今、なんて?」

バーバラの信じられない言葉に、僕は自分の耳を疑った。



「最近、あの子、いつもよりも体調が良くなかったでしょう?
それは妊娠のせいだったの。
診察を受けて、はっきりとわかったのはあの日よ。
オルガはもしそのことをあなたに伝えて、もしも流産でもしたらぬか喜びになるからって、あなたに言うことを躊躇っていたわ。
でも、私はやっぱりそういうことは話すべきだってすすめたの。
あんな不幸なことがなければ…きっと、あの晩はあなた達にとって最高の夜になったでしょうにね…」



(そんな…そんな酷い……)



僕は、獣のような叫び声を上げ、その場から駆け出した。


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