「お疲れさん、じゃあ…また明日な!」

「おい、アーロン、今日もまっすぐ帰るつもりか?」

「そうだぞ。
いくら愛する女房が待ってるからって、もう結婚して三年目なんだろ?
たまには俺達につきあえよ。
今日は、あんな大きな商談がまとまったおめでたい日なんだから。」



以前に比べれば良くなったかもしれないが、僕は元々人づきあいがそれほど得意ではないし、酒もあまり好きではない。
だから、仕事が終わるといつもまっすぐに帰宅していたのだけれど、その日は、信じられないような大きな話がまとまり、同僚達は皆浮かれていた。
それは僕も同様で、あまり乗り気ではなかったものの、結局は同僚達に誘われるがまま、僕は宴に連れられて行った。

酒は弱くても、行ってみれば行ったで、それなりには楽しかった。
きっと大きな仕事を成し得たことで、気分が良かったせいだろう。
仕事の時とは違う同僚達の別の顔を知り、たまにはこういうつきあいも良いものだと思いながら、僕は、途中でその場を抜け出し、ほろ酔い気分で家に戻った。



「オルガ、帰ったよ!」

いつもならノックをする前に、僕の足音を聞き付けてすぐに僕を迎えてくれるオルガが、なぜだかその晩は扉を開けてくれず、僕は少し不安になりながら滅多に使うことのない鍵を開けて入った。
遅くなったことで怒っているのか…いや、彼女はそんなことで怒るような性格ではない。
それでは、体調でも悪くて寝こんでいるのか?
そういえば、この所、貧血を起こすことが以前より増えていた。



「オルガ、遅くなってすまなかった。」

玄関を抜け、居間をのぞいた僕の目に映ったものは信じられない光景だった。




「……オ、オルガ!」



テーブルの傍でオルガは倒れていた。
頭の周辺に真っ赤な血を流して…
転がったマグカップと、飛び散ったココア…

僕の心臓は早鐘を打ち、足から力が抜けていくのを感じながら、僕は身動き一つしないオルガに近付いた。



(そ…そんな…まさか…)

彼女の手首に脈はなく、耳をつけた胸からも何の音もしなかった。
彼女の身体はどこかひんやりとして…でも、その顔はただ眠っているだけのようで…



「オルガ…起きてよ。
オルガーーーー!」





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