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「わぁ!動き出したよ!」
「風が気持ち良いわね!」
次の朝、一行は隣の大陸に渡る船に乗りこんだ。
エリオットもすっかり元気を取り戻し、初めて乗る定期船に子供のようにはしゃいでいた。
「ダルシャ、船が着くまでの間も稽古をつけてくれよな。」
「あぁ、もちろんだとも。」
比較的近い隣の大陸までは一週間の船旅だ。
ラスターの話によると、この世界には一つの言語しかなく、人間とエルフ、獣人、そして獣人と人間の間に生まれたごく少数のハイブリッドと呼ばれる人種がほぼ同じように分布しているということだった。
大陸ごとに特色はあるものの、エリオット達の暮らしていた世界ほどの違いはないということだ。
「ねぇ、ダルシャは隣の大陸には行ったことがあるの?」
「あぁ、あるぞ。
私は、フーリシアには親戚がいるからな。」
「……フーリシア?」
首を傾げるエリオットとフレイザーに、ラスターが説明を始めた。
「フーリシアっていうのは、俺達が今向かってる大陸だ。」
「じゃあ、ダルシャは隣の大陸のことを良く知ってるんだね。
ラスターやセリナはどうなの?」
「俺は、地元を離れるのはこれが初めてだ。」
「私も…」
「なんせ、船賃はけっこう高いからな。
あちこち旅が出来るのは金持ちだけさ。」
そう言いながらラスターは疎ましげな視線をダルシャに向けた。
ダルシャは苦笑いを浮かべ、肩をすくめる。
「そういやぁ、金の面ではなんでもかんでもダルシャに世話になっててすまないな。」
「いや、そんなことは良いんだ。」
「そうさ、ダルシャさんは腐るほどお金をもってらっしゃるんだから、構わないさ。」
「ラスター、そんな言い方良くないわ。」
セリナの言葉に、ラスターは小さな舌打ちを残し、その場を立ち去った。
「ダルシャ、ごめんなさい。
彼も悪い人じゃないんだけど…」
「あぁ、わかっている。
私はなにも気にはしていない。」
「それにしても、ダルシャにはなんであんなにつっかかるんだろう?」
「それは、奴が金のことで苦労したからだろうな。
だから、ダルシャだけじゃなく金持ち全体に憎しみみたいなものを感じてるんだろう。」
「お金持ちに生まれたのは、ダルシャのせいじゃないのにね。」
投げかけられた視線にダルシャは複雑な笑みを返した。
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