「特に面白いものもないが、せっかくだから少しこのあたりを散歩して帰るか…」

アルディの提案に従い、一行は山の中を散策する。
彼の言った通り、これといって特徴のない山だったが、景色を眺め、素朴な山の植物をみつけ、他愛ない話に花を咲かせながらそれなりに楽しい時間を過した。



「わぁ、なんだ、これ!」

祠から戻った一行は、村の広場に準備されたものを見て目を丸くした。
各テーブルの中央には色とりどりの花が飾られ、食べきれない程の料理や果物や酒が並んでおり、テーブルに着いた数十名の獣人達から、拍手が巻き起こる。



「あんた達には黙ってて悪かったが、昨夜、村人達にあんたらのことをすべて話した。
そして、皆は、あんたらを俺達の客人として歓迎することを了承してくれた。」

「本当に…?」

アルディは黙って頷いた。



「それで、祠に行ってる間に歓迎会の準備をしてもらったんだ。」

「だから、山で散歩しようなんて言い出したんだな!」

「その通りだ。
散歩のおかげで腹もすいたしちょうど良かっただろう?」

そう言って、アルディは悪戯っぽい笑みを浮かべる。



「すごいよ、父さん!
こんなご馳走、僕、見たことないや!」

カークはめったにない出来事に目を輝かせながら母親の元へ走り去った。



「さぁ、あんたらも好きな場所に座ってくれ!」

そう言われ、一瞬戸惑った一行だったが、ダルシャの提案により、皆バラバラのテーブルに着くことに決まった。
自分達を歓迎してくれる獣人皆と仲良くしたいと考えたからだ。

美しい花を愛で、美味しい料理に舌鼓を打ち、楽しい会話を交わす…
そのうちに、酒に酔った者達の一際大きな笑い声が響き、一方では歌を歌うものや踊り出す者もいた。
セリナも、獣人の前で思いがけない美声を披露し、それに合わせたダルシャの優美なダンスは獣人の女性達をうっとりとさせた。
ラスターはやけに物静かに一人黙々とグラスを傾け、フレイザーは、ほんの少ししか飲んでいないにも関わらず、笑いが止まらなくなっていた。
エリオットは獣人の子供達と、あたりをはしゃぎまわる。

人間と獣人達の宴は夜遅くまで続いた。


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