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「着いたぞ、ここだ。」
アルディについてしばらく歩くと、生い茂るブッシュが現れた。
その中を泳ぐように突き進んで行くと、突然ぽっかりと拓けた場所に出た。
そこが獣人たちの暮らす村だったのだ。
住む者の姿を除けば、その村の風景は人間の村となんら変わりない。
アルディの後にに着いて歩く五人の姿を獣人達は怯えるような視線でみつめた。
眉をひそめて見る者も少なくなかった。
(やっぱり歓迎はされてなさそうだな。)
(当たり前だ。なにもされないだけでもありがたいと思わないとな。)
「ここが俺の家だ。入ってくれ。」
アルディが、一行を案内したのは村の最奥にある一軒の家だった。
今までに通り過ぎて来た間に見かけた家々の中では最も立派な家だ。
「おかえりなさい、アルディ。
あっっ!」
中から出てきたアルディより小柄な獣人が、一行を見て驚きの声を上げた。
その声は、アルディのように低いものではなかった。
「大丈夫だ、ケィティ。
これは私の妻のケイティだ。」
「はじめまして、ケイティさん。
私はダルシャ、そしてこちらから…」
先程と同じように、ダルシャが一行の紹介をする。
「とにかく、中へ…皆、腹が減っただろう?
ケィティ、食事の準備を頼む。」
「は、はいっ。」
アルディに促され、案内された居間も人間の住まいと変わらないものだった。
一行は部屋の中をきょろきょろと見まわした。
「獣人の家が珍しいか?」
「ご、ごめんなさい。僕達、獣人の家にお邪魔するのは初めてで…」
「っていうか、獣人に会うの自体、初めてだもんな。」
「私も人間とこうして話すのも家に招いたのも初めてだ。」
「どうして我々に対してこんなにもご親切にして下さるんですか?」
「あんた達は、俺達の思ってた人間とは違ったからだ。
人間は俺達に会った瞬間に牙をむいてきやがる。
俺達の方が力が強いから怖いのかもしれないが、いきなり撃ち殺された奴だっているって話だからな。
人間は、俺達のことをけものとしか見てないんだ。
だが、あんたらは違ってた。
カークのことを人間の子供と同じように扱ってくれた。
それに俺に対してもそれは変わらなかった。
あんなに、威嚇したのに先に武器を使う事もなかった。
正直、俺は驚いたよ。」
そう言ってアルディは小さく肩をすくめた。
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