「父さん、僕ね…」

「……わかっている。
すべて見ていた。」

カークの父親は低い声でそう言うと、片手でひょいとカークをつまみ上げ、自分の肩に乗せた。



「世話になったな、人間達よ。」

「あ…あの…」

立ち去ろうとする獣人に、ラスターが声をかけた。



「なにか?」

「あ、あぁ、あのさ、こいつ…ハイブリッドなんだけど、人間に苛められててそれを俺達が助けて、それでだな…このあたりに獣人の村があるって聞いたんで、連れて来たんだが…」

「こいつを助けたというのか…」

獣人は鋭い視線でラスターの瞳をのぞきこんだ。
ラスターはその視線に絶えきれず、そっと俯く…



「すまない!
本当は私は獣人でもハイブリッドではないのだ。
この姿はある魔法使いにかけられた呪いによるもの。
私達は、ある事情があって願いの石を探している。
この子は願い石の巫女だ。
この子が願い石をこの付近に感じ、もしや君達の村にあるのではないかと考え、そのためにこんな嘘を思い付いたのだ。」

「ダルシャ…」

すべてをぶちまけてしまったダルシャに、四人はこの後の獣人の反応を考えて息を飲んだ。



「あんた、人間と獣人のことを知らんわけではないだろうな?
……俺にそんなことを言って、無事ですむと思ってるのか?」

「……悪いのは私なんだ。
殺るなら私だけを殺ってくれ。
後の者達は関係ない。
だから、どうか見逃してほしい。」

「……ダメだと言ったら、どうする?」

「その時は…」

ダルシャは、愛用の剣の柄に手を掛けた。



「そんなもので俺を倒せると思うのか?」

獣人は、嘲るような笑みを浮かべる。



「倒せはしなくとも、仲間が逃げる時間稼ぎくらいは出来るだろう…」

ダルシャは、剣からまだその手を離さなかった。
獣人はそんなダルシャをじっとみつめ続ける。
カークは父親の肩に座り、今にも泣き出しそうな不安げな表情を浮かべていた。



「……フッ……
人間にもおまえのような真っ正直な奴がいるとはな…
よし、とにかく村へ行こう!
そこで詳しい話を聞かせてもらおうか。
俺は、アルディ。よろしくな!」

「え…あ…あぁ、よろしく。
私はダルシャ。
そして、ラスター、エリオット、フレイザーにセリナだ。」

ダルシャは戸惑いながらも、皆の紹介を始める。
各々は、名前を呼ばれる度にアルディに向かって小さく頭を下げた。


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