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「よかった。骨には異常なさそうよ。
くじいただけだから、数日したら良くなるわ。
早く良くなるように、薬草を貼っておきましょうね。」
「本当?お姉ちゃん?」
「ええ、本当よ。」
セリナは、慣れた手付きで子供の足に包帯を巻きつけた。
「ありがとう、お姉ちゃん!」
子供はセリナに向かってにっこりと微笑んだ。
セリナは子供に優しい微笑を返すと、次にダルシャの手当てに取りかかった。
「ごめんなさい…僕…」
「良いんだ。
こんなの全然たいしたことないさ。」
鋭い牙で噛みつかれたダルシャの傷は、そう浅いものではなかったが、ダルシャは痛みを顔に表すことはなかった。
「あれっ?おじさん、毛がないの!?」
子供は、袖をまくりあげられたダルシャの腕を見て目を丸くする。
「お…おじさん!?
私はまだお兄さんだと思うがな…」
「おじさん!もしかして、ハイブリッドなの?」
「え…あ…あぁ、実はそうなんだ。」
おじさんと呼ばれたことがショックだったのか、ダルシャはどこか寂しげな顔でそう答えた。
(なぁ、ラスター、
「ハイブリッド」って何なんだ?)
フレイザーは、ラスターにそっと耳打ちした。
(そんなことも忘れたのか?
ハイブリッドっていうのは、獣人と人間のあいのこのことだ。
やっぱりダルシャは獣人で通すのは無理があったようだな。
でも、ま、ハイブリッドだと思ってくれるならそれで良いさ。)
「そうなんだ…おじさんも苦労したんだね。
でも、ハイブリッドと一緒に旅をしてるなんて、この人間達は良い人間なんだね。」
「そうさ、この人間達はな…」
「カーク!」
不意に聞こえた大きな声に皆が一斉に振り向くと、そこには背の高いダルシャよりもさらに頭一つ分は大きな獣人が立っていた。
背が高いだけではなく、その筋肉の付き方からしても、人間達より遥かに力がありそうなことは容易に推測出来た。
「父さん!」
カークと呼ばれた子供の父親は、ゆっくりとした足取りで歩み寄る。
「あの、お、お、俺たちは別になにも…そ、その子供が…」
一番手前にいたフレイザーが、恐る恐る口を開く。
カークの父親は、そんなフレイザーを射抜くような鋭い視線で睨みつける。
その視線は、野生の狼そのものだった。
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