「そうか…じゃあ、頑張って給料の良い仕事を探そう!
医者より儲かる仕事っていうのは少なそうだけど、探せばきっとみつかるさ。」

「おぅ!頑張るぜ!!」

リュックがこれほど負けず嫌いだとは思ってもみなかった。
今まで、私に対してはこういう面を見せたことはなかったが、それはもしかしたら、私が彼のライバルとは認めてもらえていないということなのかもしれない。
実際、何をやっても私は彼に劣っている。
考えてみれば、私が今までやってきたことといえば、誰にでも出来る農場の下働きとあとは修道院での勉強だけなのだ。
彼にライバル視してもらえないのも無理からぬことだ。
そういえば、私は修道院で薬草の知識やちょっとした病気の応急処置のようなこともある程度は学んでいたのだが、記憶を失ってる間はそんなことさえすっかり忘れていた。
覚えている事もあったのに、こうして丸っきり忘れていることもある。
人間の脳というのは不思議なものだ。
しかし、私の知識などクロワやクロードのものとは比べ物にはならない。
少し知っているのと、専門的に知っているのとでは明らかに違うのだ。
何一つとして自分に誇るものがないことに、私はあらためて自己嫌悪に陥った。



「どうしたんだ、マルタン」

「いや、なんでもない。
良い仕事がみつかれば良いなと考えてただけだ。」

「そうだな。マルタンも神様に祈っといてくれよな。」

「あぁ…」




次の朝、私達は隣町を目指し旅立った。
隣町には、夕方頃には着くだろうということだった。


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