002 : 雷が鳴る前に1


「闘技場のこと、宿のおやじに聞いたんだけど、素手での闘いの他に武器を使っての闘いもあるらしいぜ!」

「武器を?それはずいぶんと危険な話ですね。」

「あぁ、それは月に一度らしいんだけど、今までには死んだ奴もいるらしい。」

「怖いわ…」

「でも、その代わり、優勝賞金はすごいらしいぜ。
俺も何か武器でも扱えたらなぁ…」

「あんなものは扱えた所で何の役にも立たないさ。
私は人を傷付けるものは嫌いだ。」

「マルタンは、何かそういうものを使ったことがあるのか?」

「あぁ…父親に無理に習わされた時期があった。
最初はフェンシングのはずだったのだが、父親の友人にそんなものは役に立たないと言われ、大きな剣を持たされてな。」

「すごいじゃないか、そんなことが出来るなんて。
あんたが剣を使えるなんて意外だな。」

「やってたのはそんな長い間じゃないんだ。
たいしたことはない。
そんなことよりも、リュック、なんだか雲行きがあやしくなってきたようだぞ…
町に着くまでに降らなきゃ良いが…」

空は、いつの間にか鉛色の雲で覆われていた。



「これはまずいですね。
雨宿りをするような所もなさそうですし…
とにかく急ぎましょう!」

私達は急ぎ足で隣町を目指した。
その間にも空は一層暗くなり、遠くの空には稲妻が走っているのが見えた。



「これは急がないとまずいぞ!
あの雲がこっちまで来る前に、早く町にたどり着きたいもんだな!
もう町の近くまでは来てるはずだが…
ここからはちょっと走るか?!」

私達は、町に向かって走り出した。
重い荷物を背負っているため、すぐに息が切れる。
先程までは稲妻だけだったのに、遠くに雷鳴が聞こえている。
やがて、ついに大粒の雨がぽつりと頬にあたった。



「あ!町だ!!
頑張れ!!町はすぐそこだぞ!」

リュックの言葉通り、ほんの少し行った所に町が見えている。
私達は、徐々にその数を増してきた雨粒を避けながら町を目指して駆け抜けた。


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