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「この先は二股に分かれてるわね。
しかも、どっちも大きな町に繋がってるわ。
どっちに行く?」
「そうだ!今回は先生が決めたらどうだ?」
「ぼ…僕がですか?」
「そうですね。それは良い。
先生、どちらが良いですか?」
「どっちといわれましても…
どっちの方が働くのに都合が良いのか、僕にはわかりませんし…」
「そんなこと深く考えることはないんだ。
カンで良いんだよ。」
「カン…ですか…」
こういうことには慣れていないのか、クロードは地図を見つめながら真剣に考えこんでいた。
「じゃあ、こっちにしようぜ!
先生に決めさせたら、今日中に出発出来そうにないからな。」
クロードは罰の悪そうな顔をしながらも、その意見に異を唱えることはなかった。
私達は、朝食を済ませるとすぐにその町に向かい歩き出した。
「リュックさん、どうしてこっちの道を選ばれたんですか?」
「どうしてって…特に理由があるわけじゃないが、こっちの方が大きな町に近いからかもしれないな。
どうせだったら、早く働ける方が良いじゃないか。」
「なるほど…そういう風に考えれば良いんですね。
それで、リュックさんはどういうお仕事をされるつもりなんですか?」
「そんなもんは行ってから決めるさ。」
「そうなんですか…
僕は、病院か診療所があれば助かるんですが…」
「そういえば、先生は医者以外には、どんな仕事をやったことがあるんだ?」
「僕は…医者だけです。」
「そうなのか!
じゃあ、医者の仕事がなかったらクロワさんの薬売りの手伝いだな。」
「僕は、医者しかやったことがないってだけですよ。
やってみれば、他の仕事も大丈夫です!」
「そうか、そいつは頼もしいな!」
クロードは、思ったよりも負けず嫌いのようだ。
きっと、彼なら十分過ぎる程の路銀を持って来てるだろうが、働く気も十分あるように感じられる。
彼にとってこの旅は、思わぬ社会勉強の旅になりそうだ。
「そういえば、マルタンは修道士だったんだよな?
じゃあ、教会で働かせてもらったらどうだ?」
「教会で働くのは構わないが…
私はもう修道士ではない。
そんな資格はないから、出来るとしても下働きだな。」
「マルタンさんは司祭にはなられなかったのですか?」
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