「お心遣い本当にありがとうございます。
僕はここの責任者のブランドンという者です。」

ブランドンは片手を差し出し、二人は握手を交わした。



「あ…あの、申し訳ないほど、少ない額なんです。
す、すみません!」

「そんなこと…まだ、本格的に始めてもいないのに、こんなことをしていただけるなんて、本当に感謝致します。」

「いえ…どうぞ、頑張って下さいね。
あ、それと、つまらないものですが、よろしければこれを…」

男性は、バッグの中から木で造られたおもちゃの木を取り出した。



「ありがとうございます。
もしかしたら、これはあなたが彫られたんですか?」

「ええ…不出来なものですが…」

「いえ、とてもお上手ですよ。」

「ありがとう…では、僕はこれで…」

「あ…あの、良かったらお名前を教えていただけませんか?」

男性はそれには答えず、ただにっこりと微笑み去って行った。



「どこかで聞いて持って来てくれたんだろうな。
あの様子じゃ金もそう持ってなさそうなのに…良い人だな。」

「そうですね。
ありがたいことですね。」







「キャロルさん、実はさっき…」

ブランドンは先程の出来事を話し、寄付金をキャロルに預けた。



「そう…本当にありがたいことですね。
お名前も告げられないとは…謙虚な方なのですね。
……あら、それは?」

「あぁ、これもその方が下さったんです。
子供にと思って下さったのかもしれませんが、その人のお気持ちを忘れないようにここに飾りませんか?」

「そうね…」

キャロルは、おもちゃの木を手に取り、じっとみつめていた。



「……キャロルさん、何か?」

「なんだか、この木を見ているととても懐かしい気持ちがするの…
きっと、ご寄付を下さった方のお優しい気持ちがこもっているのね。」

「そうかもしれませんね。
とてもお優しい表情をされた旅人さんでしたよ。」

「そうですか…」


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