017 : 死者の花束1






屋敷の改装は順調に進み、ついに正式に開院する運びとなった。
そのことを祝って、屋敷ではちょっとしたパーティが催された。
パーティという程のものではないが、孤児院の開院に尽力してくれた人々を招いての労いの会のようなものだ。
そこには、キャロルの母親や兄夫婦も出席してくれた。



「ブランドン、ついにこの日が来たな!」

「ありがとうございます!
リュックさんには本当にお世話になりましたね。」

「なぁに、俺なんかなにもしちゃいないさ。
だけど、大変なのはこれからだからな。
頑張ってくれよ!」

「ええ、もちろんです!」

広間では、子供達が無邪気な笑顔ではしゃいでいた。
彼らはここでの暮らしにももうすっかり慣れた様子だ。
まだ小さな子供も多いと言うのに、掃除や洗濯は率先して手伝う。
広い庭には野菜畑を作り、朝、早くからその手入れをしている。
環境がそうさせたのかもしれないが、同じ年頃の子供達と比べるととてもしっかりしている。
それは良いことなのだが、どこか素直に喜べない気持ちもあった。
環境が彼ら無理に大人にさせているような…そんな気持ちだ。
しかし、今日の彼らの笑顔を見ていると、そういう気持ちも吹き飛んだ。
彼らは子供の心を忘れたわけではないのだと安心出来た。



「マルタンさん、ステファンを見掛けませんでしたか?」

クロワに声をかけられ、私は振り向いた。



「ステファン?いないのですか?」

「ええ、さっきまで傍にいたはずなんですが、私が神父様とちょっとお話をしてる間に…」

「探してみましょう。」

私とクロワは、ステファンの名を呼びながら彼の姿を探した。



「クロワさん!」

「ステファン!」

広間から少し離れた所で、ステファンはすぐにみつかった。



「まぁ、どうしたの、これ?」

ステファンは、大きな百合の花束を抱えていた。



「おじいちゃんが、ありがとうって言ってこれをくれたの。」

「おじいちゃん?どこのおじいちゃん?」

「納戸のおじいちゃん。」

「納戸の…?」

「うん、クロワさんも知ってるおじいちゃんだよ。」

ステファンの言ってることが私達にはよくわからなかった。
彼は、クロワの手を取り、納戸に導いていく。



「ほら、あのおじいちゃんだよ。」



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