「そんな馬鹿な!」

「本当ですよ。
あの屋敷の悪い噂は隣町でも聞きました。
借金で首が回らなくなった一家があの屋敷で命を断ち、それ以来あの屋敷には怨念を残した幽霊が出ると…
そんな薄気味の悪い屋敷を買う馬鹿はいないと言われていましたよ。」

「嘘だ!
私はそんな噂など…」

クロードはその言葉にくすくすと笑った。



「それはあなたに気を遣ってるからじゃないですか。
あなたが持ち主だと知っていて、そんな話を言う筈がない。」

そう言われたジョーンズは言い返す言葉を探しているようだった。



「では…なぜ、あなた方はそんな評判の悪い屋敷を買おうと?」

「それは、ルーカスさんから聞かれてらっしゃるでしょう。
彼は、亡きフランクリンさんの意思を継ごうとされているだけです。
私達も止めたんですよ。
そんな薄気味の悪い屋敷を買うのはおよしなさいと。
おそらく、フランクリンさんもそのお屋敷でそんな嫌な事件があったとはご存知なかったのでしょうな。
知っていたら買い戻そう等とは思われなかったはずだ。」

「そんな事件は本当にありません!
没落して売りに出されたというのは事実ですが、自殺などした者はいないのです!」

「あなたは売主だから、そうおっしゃるのは当然ですが、私達は町の噂の方を信じますよ。
火のない所に煙は立たないと言いますからね。
きっと、なにか良くない事があったはずだ。」

クロードは本当に弁が立つ。
彼はああやって屋敷にケチを付け、値段を下げさせるつもりのようだ。
そのうち、その計画に気付いたリュックまでもがクロードと同じようなことを言い出し、ジョーンズはすっかり気落ちし、頭を抱えてしまった。




「それでは、いくらならあの屋敷を買いたいとおっしゃるのです?」

「そうですね。
まぁ…半額と言った所でしょうか…」

「ば、馬鹿な!
あなたもあの屋敷をご覧になったでしょう?
あの広大な敷地に、あの立派な建物…あれがどれ程の価値のあるものかおわかりにならないわけじゃないでしょう!?」

「でも、今まで買い手がなかったんだろ?
維持費やらなんやらで金がかかったんじゃないか?
それに、俺は昨日中を見せてもらったが、けっこう修繕しなきゃならない場所もあったぜ。
買ってからもいろいろ手直しに金がかかるだろうし、あれじゃあ買う方も大変だ。」

「そりゃあ、古い屋敷ですからそれなりに手はかかるでしょうが…」

それもリュックのでまかせだ。
昨日は、室内を見ながら良い普請だと誉めていたのだから。


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